ハッシュ値とは?【ハッシュ関数との関係性やセキュリティ用途までわかりやすく解説】

電子データの暗号化や照合など、さまざまな場面で活用されているハッシュ値とハッシュ関数。意外と身近な部分で活用されるこの値は、いったいどのような仕組みなのでしょうか。

デジタルデータの送受信時には、ハッシュ関数を使ってデータをハッシュ値に変換することがあります。ハッシュ値は、データ処理の高速化や検索の高速化のために利用されます。

また、データの改ざんを防ぐことを目的としてハッシュ値が使われるケースも多いです。

この記事では、ハッシュ値とハッシュ関数の関係性や電子署名や電子文書の送受信においてハッシュ値をどのように使うべきかなどから「ハッシュ値とは何か?」について、わかりやすく解説します。

ハッシュ値とは

ハッシュ値とは、元のデータからハッシュ関数によって算出された固定の桁数の値のことです。ハッシュ値は暗号化や認証など、さまざまなデータ関連のセキュリティアプリケーションで利用されています。

ハッシュ値は元のデータが同じ場合、必ず同じ値が生成されます。しかし、少しでもデータが異なる場合、生成されるハッシュ値も全く異なります。この性質により、ハッシュ値はデータの一意性を検証するのに役立ちます。

ハッシュ値は不可逆変換の結果であり、元のデータをハッシュ値から復元することは不可能です。このため、パスワード管理やデータ整合性の確認などで使用されています。

ハッシュ関数は様々な種類のデータに適用できます。文字列、電子文書、メール、メッセージ、パスワードなど、さまざまなデータ形式に使用されます。ハッシュ関数によってデータは固定長の文字列に変換されます。

ハッシュ値は、例えば12桁や16桁など、複数の桁数を持つことがあります。ハッシュ関数は様々なデータを数値化するため、情報のサイズに制限はありません。文字、数値、映像、音楽など、どんな情報でもハッシュ値で表すことができます。大きなデータでも、ハッシュ関数を使用すれば短い数値で表現可能です。

ハッシュ値の特徴

ハッシュ値は、データの特定の性質を強調する特徴的な性質を持っています。その主要な特徴は以下の通りです。

  1. 少しの変更で全く異なるハッシュ値 ハッシュ値は元のデータに対して計算され、わずかな変更があっても、生成されるハッシュ値は全く異なります。この特性は、データの一意性や整合性の確認に役立ちます。たとえデータがわずかに変更された場合でも、ハッシュ値の大幅な変化は確認できるため、データの改ざんを検出するのに役立ちます。
  2. ハッシュ値同士に関連性なし ハッシュ値同士には元のデータの関連性が反映されません。これは、データの内容が類似していても、ハッシュ値が関連性を持たないことを意味します。そのため、データ間の類似性や関連性を解析される心配がありません。
  3. 逆算不可能な性質 ハッシュ関数は不可逆的な性質を持ちます。つまり、ハッシュ値から元のデータを復元することは不可能です。この性質は、データの安全性とプライバシーの保護に役立ちます。
  4. 漏洩リスクの低減 ハッシュ値は、機密性の高いデータを扱う際に有用です。データが漏洩した場合でも、ハッシュ値に変換していれば、元のデータが漏洩したことを知られない限り、安全に情報を保護できます。

ハッシュ値はこれらの特徴により、データの整合性の確認、改ざんの検出、プライバシーの保護、セキュリティの向上など、多くの用途で利用されています。

ハッシュ値とデータの安全性

ハッシュ値はデータの安全性を確保するために重要な役割を果たしています。ハッシュ関数の利用により、データの安全性が向上します。

ハッシュ関数を使用してデータのハッシュ値を計算し、保存されたハッシュ値と照らし合わせることで、データが改ざんされていないことを確認できます。ハッシュ値は元のデータに対して微小な変更があるだけで異なる値になるため、改ざんが試みられた場合、ハッシュ値に変化が現れます。

ハッシュ値はデータの一意性を確認するのに役立ちます。異なるデータに対しては異なるハッシュ値が生成され、同一のデータには同じハッシュ値が生成されるため、データの一意性を確認できます。

ハッシュ値はデータの完全性を確認する手段として使用されます。データが送信や保存の過程で破損したり改ざんされたりしないように、ハッシュ値を計算して比較することで、データの完全性を確保できます。

ハッシュ関数は電子署名の信頼性を高めるのに役立ちます。データのハッシュ値を取得し、電子署名に含めることで、電子文書の完全性と認証性を確保できます。このプロセスにより、電子文書の送信者の真正性が証明されます。

ハッシュ化技術は、機密データの送信や保存、データの完全性の確保、電子署名など、さまざまなセキュリティ関連の用途で広く活用されており、データの安全性の向上に貢献しています。

ハッシュ化のイメージ

オンライン上で会員登録を行うケースを例に、ハッシュ化をシュミレーションしてみましょう。

例えば、あるユーザーのパスワード「1234pass5678」に対して、会員登録のデータベースでハッシュ化が実行されると「87cf1080755fcc5d0d243169b22264fa」のようなハッシュ値が生成されます。「87cf1080755fcc5d0d243169b22264fa」は「1234pass5678」と連動する固有の値です。

そして2回目以降のログインでは、入力されたパスワードに対してデータベース側で「87cf1080755fcc5d0d243169b22264fa」との照合を行えば済むため、秘匿性の高いログイン処理が可能になるのです。

ハッシュ値の生成の仕組み

ハッシュ値の生成は、ハッシュ関数による特別なアルゴリズムの適用を通じて行われます。元のデータがハッシュ関数に供給され、一方向関数を使用して固定長のハッシュ値が生成されます。

このハッシュ値はデータの整合性検証やセキュリティ向上のために利用され、同じデータに対しては常に同じハッシュ値が生成されます。

データの微細な変更にも異なるハッシュ値が生成され、データの安全性と整合性を確認するために不可欠です。

ハッシュ関数の種類

ハッシュ関数とは、元データからハッシュ値を計算する手順において使われる関数のことを指します。ハッシュ関数は暗号化に役立つ技術ですが、ハッシュ値から元データを割り出すサイバー攻撃の手法もあることから、ハッシュ関数は日々進化しています。

セキュリティを最重視するのであれば、使用するハッシュ関数についても理解しておくことが肝心です。こちらでは、現在までに使われてきたハッシュ関数の種類を紹介します。

4-1.MD5

MD5はMessage Digest5の略称で、1991年に考案されました。

当時はハッシュ関数として有効とされていましたが、現在ではセキュリティ面の脆弱性が指摘されていることから使用は推奨されていません。

4-2.SHA-1

Secure Hash Algorithm1の略称であるSHA-1は1995年から使われるようになったハッシュ関数です。

こちらも2005年頃に攻撃の手法が発見され、現在では安全性に不安が残るものとなっています。

グーグルも既にSHA-1の証明書受け入れを停止するなど、現在はあまり使われていないのが実情です。

4-3.SHA-2

SHA-2(Secure Hash Algorighm2)は2001年から使われるようになったハッシュ関数です。

SHA-2にはSHA-224やSHA-256、SHA-384、SHA-512、SHA-512/224、SHA-512/256といった種類があり、現在はSHA-256が一般的に使われています。

ハッシュ値の長さは224、256、384、512ビットのいずれかに設定されます。

4-4.SHA-3

SHA-3(Secure Hash Algorighm3)は2015年に公表された新たなハッシュ関数です。

より安全性の高いハッシュ関数を使ったデータの送受信をしたいときにはSHA-3の使用がおすすめです。

ハッシュ値のデータ送信への利用

ハッシュ値は、データ送信や保存時のリスクを低減させるために重要な役割を果たします。

ハッシュ関数を使用してデータのハッシュ値を計算し、受信者側で再度計算し、送信元と一致するかどうかを確認することで、データの完全性と正当性を確保できます。データが改ざんや破損された場合、ハッシュ値に変化が生じ、問題が検出されます。

これにより、データの信頼性を高め、機密情報や重要なデータの送信時にリスクを軽減できます。ハッシュ値はデータの一意性を確認し、改ざんの検出、完全性の確認、電子署名の信頼性向上など多くのセキュリティ関連の用途で広く活用されています。

ハッシュ値と暗号化の違い

ハッシュ値と暗号化は、データセキュリティを強化するための2つの重要なコンセプトです。

ハッシュ値は、データの整合性を確認し、改ざんを検出するために使用されます。これは、元のデータから固定の桁数の値を生成し、その値を元のデータと比較することによって完全性を確認する方法です。一番の特徴は、ハッシュ値から元のデータを復元することができないことです。そのため、セキュリティ上のリスクがある状況でデータを保存したり転送したりする際に有用です。

電子契約や電子署名において、契約書の改ざんを防ぎ、データの整合性を保証するのにハッシュ値が活用されます。また、タイムスタンプと組み合わせて、特定の時点でデータが変更されていないことを確認できます。

一方、暗号化はデータの機密性を保護するために使用されます。暗号化は、データを特定のアルゴリズムに従って変換し、復号鍵を使用して元のデータに戻すことができます。データを暗号化することで、不正アクセスや盗聴からデータを保護できます。電子契約や電子署名において、個人情報や機密情報を安全に転送したり保存したりするために暗号化が活用されます。暗号化を適用することで、データの漏洩リスクを軽減できます。

電子契約や電子署名において、ハッシュ値と暗号化はセキュリティ戦略の一部として重要です。ハッシュ値はデータの整合性を保証し、暗号化はデータの機密性を確保します。

また、タイムスタンプと組み合わせて、契約の履行時期やデータの改ざんを追跡するのに役立ちます。適切な状況でハッシュ値と暗号化を使い分けることで、セキュリティの向上に貢献します。

ハッシュ化の安全性

ハッシュ化におけるセキュリティの高さは、生成される文字列の長さで変わります。文字列が長いほど生成パターンが増えるため、同じものが返される「衝突」が起こりにくくなるのです。

かつての主流であったMD5やSHA-1はハッシュ値の長さが短いため、現在はセキュリティ技術としての利用が推奨されていません。

一方、現在の主流となっているSHA-2のうち、最も安全性が高いとされるSHA-512の生成パターンは「16の128乗」通りです。42.9億を16回掛けた数の文字列が生成されるため、衝突確率はほぼゼロと考えてよいでしょう。

電子署名と電子文書におけるハッシュ値の用途

電子署名には、非改ざん証明や本人証明が欠かせません。これらの証明がなければ、電子データの法的効力が認められません。ハッシュ値や暗号化は、電子署名において非改ざん証明と本人照明のために用いられています。

電子文書を送信する側は、まずその文書をハッシュ関数によってハッシュ値に変換します。さらに、認証局から取得した秘密鍵を用いてハッシュ値を暗号化します。電子文書を送信する際には、元のデータと暗号化されたデータ、そして電子証明書(公開鍵)を一緒に送信する必要があります。

電子文書を受信する側は、最初に送られてきた電子証明書の公開鍵が認証局から発行されたものであるかどうかを確認します。確認ができたら、公開鍵を取り出して暗号化されたデータを復元します。送信者がハッシュ関数によって生成したハッシュと、復元したデータの内容が一致すれば、送られたデータが改ざんされていないことが証明されます。

このプロセスにより、電子署名が法的に有効であり、電子文書が信頼性のあるものであることが確認されます。ハッシュ値と暗号化は、電子文書の安全な送受信に欠かせない要素となっています。

まとめ

ハッシュ関数は、データのサイズに関わらず固定の長さの文字列を生成する関数です。このハッシュ値は、データの送受信時に秘匿性を高め、データの安全なやり取りに役立ちます。

ハッシュ化を利用することで、パスワードや電子署名を安全に管理でき、情報漏えいなどのリスクを軽減できます。データのセキュリティを向上させるために、ハッシュ値とハッシュ関数の適切な活用方法を理解する必要があります。

ハッシュ値の理解は、デジタルデータの安全性と効率的な活用に不可欠であり、ハッシュ値はパスワードの安全な管理、データの整合性確認、電子契約や電子署名、セキュリティプロトコルの実装など、多くのシーンで重要な役割を果たしています。データの送受信や保存において、ハッシュ値を適切に活用することで、情報漏えいのリスクを軽減し、データの信頼性を向上させることができます。

ハッシュ値はデジタルな日常生活において、セキュリティと効率の向上に貢献する不可欠なツールと言えるでしょう。そのため、ハッシュ値についての理解を深め、適切な活用方法を模索していくことが大切です。