電子契約のメリット・デメリットを徹底解説【押印業務の効率化やコスト削減に役立つ?】

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電子契約のメリット・デメリットを徹底解説【押印業務の効率化やコスト削減に役立つ?】

近年、多くの企業がデジタル化の波に乗り、オンラインでのコミュニケーションを積極的に活用しています。しかし、「オンラインでのやりとりが増えても、契約の取り交わしなどは紙の書類で行う」という契約書や重要な文書の取り交わしにおいて、紙の書類に頼る企業も依然として存在します。

一方で、デジタル上で契約を締結する「電子契約」の導入が広がりつつあり、これには多くの影響が及ぶと言えます。電子契約の導入が進む理由の一つに、政府の「ペーパーレス化」や「脱ハンコ」推進があります。これにより、多くの企業が契約書の電子化を検討し、実際に導入しています。

電子契約を導入することで、業務の効率向上やコストの削減などさまざまなメリットを受けることができます。しかし、導入を考えている方の中には、電子契約についてさまざまな不明点や懸念点を持っている方もいらっしゃるでしょう。

本記事では、電子契約の利用を考えているものの「どういうものかよく分からない…」そんな声にお応えします。電子契約の具体的なメリット(コスト削減・業務効率)と、導入に向けた検討課題や注意点・デメリットも合わせて分かりやすく解説していきます。

電子文書に電子署名を行って締結する電子契約とは?

電子契約とは、電磁的記録で作成・締結する契約のことで成立する契約行為のことを言います。電磁的記録とは、電子的方式、電磁的方式そのほか人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいい、PDFのような電子データに電子署名を行います。

書面契約から電子契約へ切り替えた場合、「コスト削減」「業務の効率化」など多くのメリットが見込まれます。中でも、契約締結ごとに負担していた200円~数十万円の収入印紙が不要になるのは大きな利点です。

脱ハンコ」を掲げた国を挙げてのデジタル化推進策の後押しと、コロナ禍における急速なリモートワークの普及を受けて、ますます電子契約への切り替えが進んでいくと考えられています。

  • 「電子契約に切り替える具体的なメリットを知りたい」
  • 「メリットだけじゃなくて、デメリット(注意点)も教えてほしい」
  • 「紙の原本のようなしっかりとした証拠力があるのか心配」
  • 「具体的に、どんなシステム・サービスがあるんだろう」

今回はそんな方々向けに、電子契約に切り替えた際のメリットだけでなく、「こういう業態・企業は向いていない」「状況によってはこういう難しい局面がある」などのデメリット(利用する上での注意点)も分かりやすく説明していきます。検討する際の参考にしてください。

電子契約に関連する法律

電子契約は、法律上も認められている契約方法です。
「電子署名法」には、電子的に作成された書類であっても、本人による電子署名が行われていれば真正に成立したものと推定するという旨の記載があります。つまり、電子契約であっても、有効な電子署名が行われていれば、押印のある書面に適用される二段の推定と同様の効力を発揮するということです。

また、電子契約で取り交わした契約書の保存については、「電子帳簿保存法」や「e-文書法」に定められています。電子契約で契約を締結した契約書が法令上保存義務のあるものである場合、これらの法律が定める方法に則って保存をしなければなりません。

なお、具体的な機能は各システムにより異なりますが、電子契約システムでは法律に則った契約書の保存が可能です。ただし、電子契約を結んだ取引先に対しては、電子契約の適切な保存について伝える必要があるでしょう。

電子契約の証拠力は?

文書が証拠として認められるためには、本人の意思で文書を作成したことを証明する必要があります。従来は紙で作成した契約書に、双方の担当者が「押印」することで契約締結の証拠としていました。その他、本人が作成した証拠として「印鑑証明書」、改ざんを防止するために「契印・割印」などが存在します。

電子契約では以下のような一定の条件のもと、書面契約と同様の効力が認められています。

  • 押印の代わりに「電子署名」
  • 印鑑証明書の代わりに「電子証明書」
  • 契印・割印の代わりに「タイムスタンプ」

電子契約システム・サービスは目的・機能別に様々なものが存在しますが、ほぼすべてが上記を標準機能として搭載しています。比較検討の際にわざわざ「対応しているか」を心配する必要はありません。
(ただし、電子証明書に関しては、事業者の電子証明書はあるものの、契約を行う当事者の電子証明書には対応していないシステムも多くあるので注意が必要です)

電子契約と書面契約の違い

長く主流だった書面契約と電子契約では、何が決定的に違うのでしょうか。電子契約のメリットは後述するため、ここではそれぞれの違いに着目してみます。

第一に、書面契約と電子契約では、紙面の契約書が手元に実在するかどうかに違いがあります。書面契約では、作成した契約書を印刷して、契約を交わす双方が実物を見ながら内容の確認をしたり、割印を押したりすることが必要です。
一方、電子契約は、電子契約システム上で契約が完結します。書類はPDF等の電子データで、署名は電子署名であるため、印刷や郵送などのコストがかかりません。

第二の違いは、電子契約では、書面契約にない「タイムスタンプ」と呼ばれるセキュリティ管理を利用する点です。タイムスタンプは電子的なスタンプで、電子証明書に付与することで改ざんがないことを証明できる技術です。

電子契約の9つのメリット

書面契約から電子契約に切り替えた場合のメリットとして、大きく以下の9つが期待できます。

  • 印紙税の削減
  • 事務労力・事務経費の削減
  • 契約締結までのリードタイムの短縮
  • 保管・管理の効率化
  • リモートワーク対応が容易
  • 契約更新の確認漏れ防止
  • 類似契約書の作成業務の効率向上
  • 契約手続きの可視化
  • コンプライアンスの強化

以下、一つひとつ具体的に説明していきます。

1. 印紙税の削減

紙の契約書は法律により、収入印紙を貼ることが義務付けられています。税額は契約の種別や契約金の大きさによって異なります。1件辺り200円~大きいものでは数十万円。1件の金額は高額でないとしても、建設業・工事業・運送業など多くの請負契約を結ばなければならない企業にとっては大きな負担です。

電子契約に切り替えた場合、契約書は法律で言うところの「課税物件に掲げる文書」ではなくなるため、こうした印紙税が不要になります。また、収入印紙を貼るのを忘れてしまった場合、「税の納付を怠った」として納付すべき額の3倍を徴収されてしまいますが、そのリスクを避けることもできます。

2. 事務労力・事務経費の削減

紙の契約書の場合、1つの契約を締結するまで多くの事務作業が必要になります。たとえば、「契約書を印刷し、製本する」「契約書に収入印紙を貼る」「封筒に宛名を記入する」「封筒に契約書を封入する」「郵便局に投函しに行く」など。これらの手間暇に加えて、インク代・印刷代・郵送代などの事務経費も見逃せない部分です。

電子契約では、契約書のやりとりはインターネット上で行われます。電子ファイルをアップロードするだけで済むため、「印刷・製本」「宛名書き」「封入・投函」などの事務作業は必要ありません。スタッフはその浮いた時間を他の作業に充てることができ、事務効率の改善と生産性の向上が期待できます。さらには、インク代・印刷代・郵送代などの事務経費も削減できます。

3. 契約締結までのリードタイムの短縮

書面契約の場合、合意した後に契約書原本を印刷して製本し、押印して送付。取引先に押印してもらい、返送してもらうなど時間がかかります。決裁者・担当者が不在の場合には数週間かかることも少なくありません。ビジネスではスピードが重視されるため、致命的な遅れになることも考えられます。

電子契約であれば、クラウド上でデータを確認し、合意したその場でスピーディーに契約を締結することができます。電子契約サービスによっては、契約合意前の契約書作成をサポートする機能を備えたものもあります。また、クラウド上で「承認作業が今どの段階にあり、誰のマターなのか」というステータスを管理することができるため、作業の遅延や漏れも起きにくくなります。

4. 保管・管理の効率化

契約書は法律により、一定期間、保存が義務付けられています。紙の契約書の場合、原本をファイリングして、キャビネットなどに鍵をかけて保管しておくのが一般的ですが、企業によっては「保管スペースに余裕がない」「ファイリングが面倒臭い」「どこに何があるか分からない」などの課題を抱えているところもあるでしょう。

電子契約の場合、契約書はデータとしてクラウド上にまとめて保管できますので、保管方法やスペースに悩むことはありませんし、情報漏洩や紛失のリスクを回避することができます。また、検索機能を利用すれば必要に応じて目的の契約書を簡単に閲覧できます。既存の書面の契約書もスキャンして電子化することで、有効活用することもできます。

5. リモートワーク対応が容易

コロナ禍をきっかけに急速に広まったテレワーク・在宅ワークなどのリモートワーク。にもかかわらず、契約を締結に際して「会社の判子がなくて押印できない」「プリンターがないので印刷して製本できない」という理由で、自宅から会社にわざわざ出勤する人も少なくありませんでした。

電子契約であれば、紙と押印を必要としないため、場所と時間を選ばずに契約を締結することができます。現状、リモートワークを補完的にしか利用していないものの、将来的に完全リモートワークへの移行を検討している企業は、リモートワーク下でも契約業務が円滑に進むよう、今のうちに電子契約の導入を進めておきましょう。

6. 契約更新の確認漏れ防止

サービスを提供する側と受ける側の双方にとって、契約期間の終期は重要です。「サービスの見直し」「契約打ち切り」「契約の継続」を検討し、何らかのアクションを起こす必要があります。しかし、膨大な量の契約を管理していると、「更新期限に気づかず、期限を逃してしまった」という事態も起こりえます。

電子契約なら、契約期限の管理も容易です。たとえば「契約終了の2カ月前に自動通知」というように、更新期限が近づいたらアラート通知をするよう設定することもできます。通知回数の設定、期限以外の通知条件の追加、通知先などの条件も柔軟に設定することが可能です。

7. 類似契約書の作成業務の効率向上

新規の契約を作成する場合、既存の契約書のなかから類似の契約書を探し出し、それを参考にして新規の契約書を作成することが多いでしょう。書面契約では、保管庫からファイルを取り出して、類似の契約書を探し出すのにもそれなりの労力がかかります。

電子契約では、類似の契約書を容易に検索して探し出し、新規の契約書を作成することができます。これにより、契約書作成業務の省力化・業務効率向上が図れます。

8. 契約手続きの可視化

電子契約システムでは、契約手続きが今どの段階にあるのかが可視化されます。
書面の契約書の場合、郵送した後は、先方が内容を確認しているのか、返送している途中なのかといった過程がわかりません。返送に時間がかかっていたとしても、頻繁な催促はしづらいでしょう。

電子契約であれば、フローが現在どの段階なのかがひと目でわかりますので、先方の手続きが進んでいない場合はフォローをすることもできます。また、「もう返送しているはず」といった認識の誤りによるトラブルも避けられます。

9. コンプライアンスの強化

電子契約システムでは、IPアドレスによるシステムへのアクセス制限や、承認権限の設定といったことも可能です。また、タイムスタンプにより客観的でスピーディな証拠作成が容易となることに加え、実際の契約締結日よりも過去の日付を契約締結日として契約書に記載するバックデートなどの不正も防止できます。

保管についても、システム側で適切なバックアップが行われますので、コンプライアンス強化にもつながるでしょう。

電子契約のデメリットや活用の注意点

メリットを説明したところで、次に電子契約に切り替える上での注意点やデメリットについても触れていきます。

すべての契約が電子契約に対応しているわけではない

契約には様々な契約類型が存在します。大多数の契約が電子契約できますが、一部利用が制限されているものもあります。たとえば、以下の契約は法令の定めにより紙の書面が必要とされています。現状では、双方の承諾・希望が合致したとしても電子契約を結ぶことはできません。

  • 定期借地契約・定期建物賃貸借契約
  • 宅地建物売買等媒介契約
  • マンション管理業務委託契約
  • 訪問販売等特定商取引における交付書面
  • 労働者派遣(個別)契約 など

ただし、派遣法改正により、2021年1月より、労働者派遣(個別)契約書の電子化が解禁されました。現在のデジタル化の潮流を考えると、上に挙げた契約書も将来的には電子化が認められるようになると予想されます。

電子契約に切り替えるには取引先との合意が必要

契約書は二者以上の同意をもって締結するものです。いくらメリットがあるからと言って、一方的に電子契約に切り替えることはできません。同意を得る必要がありますが、取引先によっては拒否反応を示すことも考えられます。その場合、単に利用を促すのではなく、電子契約のメリット・法的証拠力などを分かりやすく説明し、協力をあおぐようにしましょう。

合意が得られなかった場合、紙の契約書と併用して運用するのが現実的です。取引先とは紙で契約書を締結し、取引先は紙の原本を保管して、自社はPDF化して電子保管するという形態です。

取引先の状況によってはサポートが不可欠

取引先から「電子契約を受け入れる」という合意を得る上で重要なのが、電子契約を利用するための「コスト・労力」などの準備負担の部分です。いくら電子契約に切り替えるメリットがあるとはいえ、取引先としても余計な初期投資や手間暇は避けたいところでしょう。

双方が同一のシステム・サービスを利用するのが一番ですが、中にはアカウントを持たなくても、リンク先のURLを送るだけで、クラウド上で契約締結が可能なものもあります。ただし取引先担当者がインターネットやITに抵抗がある場合、設定・操作に手間取る可能性があるため、フォローをお忘れなく。

それ以外にも「電子契約書は法的な証拠力があるのか」など問い合わせが寄せられることも考えられます。事前に説明しておくのはもちろん、利用開始後も同様の質問が寄せられることが考えられるため、説明のためのトークスクリプトや想定Q&Aを用意しておくことをお勧めします。

業務フローの変更

書面契約書と電子契約では、締結までのフローが異なります。電子契約を導入する際は、新たなフローを検討するとともに、社内に周知もしなければいけません。

また、実際に電子契約書を利用する従業員に対して、特徴や利用方法についての教育を行う必要もあるでしょう。

サイバー攻撃の可能性

電子契約は自社サーバーやインターネット上に保管されます。そのため、サイバー攻撃の被害に遭う可能性も否定できません。システムのセキュリティは向上しつつありますが、電子契約システムを導入する際には、セキュリティの信頼性が高いシステムを選ぶとよいでしょう。

電子契約導入や活用の注意点

電子契約のデメリットを押さえた上で、社内に電子契約を導入や活用する際の注意点もご紹介します。電子契約導入の際に、どのようなことに気をつけていくべきかを確認していきましょう。

反対意見に対する社内調整を行う

電子契約を利用することは決して難しいことではありません。一般的なオフィスワーカーであれば、操作方法に悩むこともないでしょう。それでも、社内で導入への反対意見が出ることは想定できます。それらの反対意見の根底にあるのは、「これまで慣れ親しんでいた押印のワークフローが変わる」ことや、「自分の業務の進め方が変わってしまう」といった変化に対する拒否反応が原因であることが考えられます。

「電子契約の操作は簡単だから誰もがすぐに活用してくれる」と思い込むのではなく、反対意見に対する対策の検討等の社内調整が必要になることには注意をしてください。

電子契約サービス導入後のサービス変更は手間がかかることを認識する

電子契約サービスは、SaaSと呼ばれる長期的な利用を前提としたサブスクリプションサービスで提供されていることが多いです。

導入を予定している電子契約サービスが本当に自社にとって正しいサービスであるか、そして利用を開始すれば利用方法を社内で周知している等ほかのサービスに乗り換える場合は手間がかかるといった注意点は、社内でよく確認しておきましょう。

改正電子帳簿保存法に対応しているか確認する

導入を検討している電子契約サービスが2022年1月に施行された「改正電子帳簿保存法」に対応していることを確認しましょう。改正電子帳簿保存法に対応していないサービスを導入してしまうと、別途、改正電子帳簿保存法に対応した文書管理サービスの導入や契約書の紙での保管が必要となり、余分なコストがかかる場合があります。

一方で、改正電子帳簿保存法に対応しているサービスであれば、契約書を紙にプリントアウトして保管する必要はなく、そのまま電子データで保存すれば良くなります。その結果、印刷やファイリングの手間が省けて業務効率化につながるほか、膨大な紙の契約書を保存するためのスペースが不要になります。

それでも電子契約を利用しない理由とは?

長引くコロナ禍の影響でリモートワークも社会に浸透し、今後、電子契約への切り替えもさらに進んでいくことが予測されます。しかし、業態・事務フローによっては、今すぐに切り替える必要のない場合もあります。具体的には、以下のようなケースが考えられます。

明らかな導入効果が見込めない場合

電子契約に切り替える最も大きなメリットと期待されているのが「印紙代の削減」「事務労力・事務経費の削減」です。導入を検討する際には「月間、どれくらいの契約締結数があるのか」「どれくらい印紙代を支払っているのか」「契約締結のために事務工数がどれくらいかかっているのか」、導入効果を試算してみましょう。

明らかな経費削減効果が見込める場合は電子契約を利用すべきですが、中には判断に迷う企業もあるはずです。たとえば、印紙代は契約類型・契約金額の大小により異なります。契約締結数がそれほど多くない場合は、コストメリットを実感しにくいかもしれません。また電子契約への切り替えは事務フローの見直しを必要とします。今のフローが上手くいっており「余計な手を加えたくない」という場合は、導入を見送るのも一つの見識です。

ただし、長い目で見ればデジタル化の潮流は避けて通れません。自社で切り替えなかったとしても、取引先から持ちかけられることを頭の隅に留めておきましょう。来たるべき時に備えて「契約締結数がここまで増えたら・これぐらいの事務コストがかかったら電子契約に切り替える」など、ある程度の導入ラインを考えておくことをお勧めします。

紙との並行利用が負担になる場合

仮に電子化に踏み切ったとしても、一度にすべての契約が電子契約に切り替わるわけではありません。取引先に切り替えを働きかけつつ、しばらくは紙の契約書と併用して運用していかなければならない「過渡期」が続くでしょう。その場合、以前に締結した紙の契約書も含めて「電子契約書と紙の契約書、両方をどのように運用・保管していくか」業務フローを考えなければなりません。

まず、現状の取引先のうち、電子化できそうなところを洗い出してみましょう。割合にもよりますが「紙の方が多くて、かえって管理部門に運用の負担がかかる」ということであれば電子化を見送ることも考えられます。「紙とデジタルの運用比率が変わるまで導入を待つ」ということも一つの手です。

電子契約を導入する際のポイント

これまで書面で行っていた契約を電子化する場合、電子契約サービスを導入する必要があります。サービスを比較検討する際には、削減できるコストが初期費用およびランニングコストに見合うこと、利用方法がシンプルで定着しやすいこと、予算内で導入できることなどと併せて、導入支援を受けることができるか確認しましょう。

導入に際しハンズオンでの対応・導入支援が整備されているサービス・専門家のサポートを受けられるサービスを選ぶことで導入後にスムーズに電子契約システムの利用を開始することができます。

電子契約システムの選び方や主なシステム

主な電子契約システムを目的・機能別に紹介しています。一覧表に目を通しながら自社に合ったものを確認できるので、「色々あって何を選んだらいいか分からない」という方も安心です。

電子契約システムを選ぶ際には、搭載されている機能や取り扱っている電子契約の種類など確認すべき点があります。また、テレワークの増加や脱ハンコの背景から法整備が増えてくると予想されるため、導入製品の選定は慎重に行いましょう。ここでは具体的にどのようなポイントに着目すればよいか解説します。

導入目的に応じた契約方法に対応しているか

電子契約には、認印の代わりとして広く一般的に使える「立会人型(事業者署名型)」電子契約と、本人性を担保し、高い法的拘束力を持った「当事者署名型」電子契約があります。

どちらか一方の契約方法にだけ対応しているものや、両方の契約方法に対応しているものなど、製品によって異なります。自社の導入目的や契約の種類に応じて検討しましょう。

なお、本人性の担保が課題となっていた「立会人型」電子契約も、「2要素認証」や「暗号の強度化」などで署名者の身元確認ができれば、裁判などでも契約書を有効なものと認めるといった政府の見解が出されました。そのため、立会人型のシステムを検討する場合は、「2要素認証」や「暗号の強度化」をポイントに機能をチェックするとよいでしょう。

参考:利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)|総務省

必要な機能があるか

電子契約システムにはさまざまな機能が搭載されているため、導入目的に合う機能があるかどうかの確認が重要です。

例えば、社内での稟議や承認が複雑化しているなら、ワークフロー機能があると便利です。事前に承認ルートを設定でき、進捗を確認して遅れがあればアラートで通知される製品など便利でしょう。また、契約書の作成に時間がかかっているのであれば、テンプレート機能やシステム連携(API)機能がおすすめです。契約内容ごとにテンプレートが用意されている製品であれば、毎度契約書をイチから作成する手間を省けます。

企業独自の契約書がある場合は、既存のCSVデータなどからテンプレートが作成できる製品を選ぶとよいでしょう。さらにSFAやCRM、会計システムなどと連携すると、既存の顧客データをそのまま反映したり、会計データを自動転記できたりと、事務作業の多くの工数を削減します。

セキュリティやコンプライアンスの強化が可能か

電子契約システムはインターネット上で電子データをやり取りするため、サイバー攻撃の対象になりやすく、情報漏えいのリスクがあります。そのため、不正アクセスやDoS攻撃など、さまざまな攻撃に対応できる厳重なセキュリティ対策が施されているか確認しましょう。

具体的には、2要素認証や電子証明書による本人確認、通信の暗号化といった機能のほか、権限ごとのアクセス制限や従業員の操作ログ取得といった内部のセキュリティ対策などです。また、契約更新期限の管理ができるとコンプライアンス強化にもつながるでしょう。

取引先企業と自社内で使いやすいか

取引先企業も電子契約サービスのアカウント発行が必要な場合や、利用料金がかかる場合もあるので、その点も考慮しましょう。例えば、メールで契約書のURLを送付し、取引先企業側はURLを開くだけでシステムを利用できるような製品がおすすめです。アカウント発行やログインの必要がなく、取引先企業においても使いやすいでしょう。

もちろん、自社内での使いやすさも重要なため、フリープランや無料トライアル期間で導入前に試してみることをおすすめします。

【比較表】おすすめの電子契約システム

ここからはiidx(イイデイエックス)が厳選した、高機能で使いやすい電子契約システムを紹介します。まずは各製品の特徴や機能、価格を一覧にした比較表から見ていきましょう。

製品名比較ポイント契約の種類2要素認証テンプレートシステム連携参考価格レビュー評価
クラウドサイン法律の知見をもつ弁護士ドットコム株式会社が開発月額10,000円~
※無料プランあり
4.4
★★★★
☆☆☆☆
電子印鑑GMOサイン電子印鑑GMOサイン文書管理機能が充実当事者・立会人両型月額9,680円~(税込み)
※無料プランあり
4.3
★★★★
☆☆☆
Great Signさまざまな業務システムを一括サポート・多機能で低コスト立会人両型月額8,580円~(税込み)
※無料プランあり
5.0 ★★★★★
Shachihata CloudShachihata Cloud電子印鑑を作成し電子データで捺印立会人両型◯(オプション)◯(オプション)月額110円~/ユーザー4.3
★★★★
☆☆☆
「マネーフォワード クラウド契約」マネーフォワード クラウド契約押印申請から電子契約までワンストップで実現月額2,980円~4.4 ★★★★
☆☆☆☆
『FAST SIGN』FAST SIGNスマホを利用した個人契約にも対応立会人両型月額10,000円~5.0 ★★★★★
BtoBプラットフォーム 契約書BtoBプラットフォーム契約書最新のブロックチェーン技術で安心のセキュリティ立会人両型月額10,000円~
※無料プランあり
4.3 ★★★★
☆☆☆
ジンジャーサインジンジャーサイン多様な機能とセキュアなデータ管理立会人両型4.1 ★★★★
freeeサイン弁護士監修で安心の電子契約月額6,578円~/ユーザー
※無料プランあり
4.3 ★★★★
☆☆☆
Acrobat Sign充実したPDFと電⼦サイン機能立会人両型月額1,848円~/ユーザー
※無料プランあり
4.4
★★★★
☆☆☆
Docu Sign44言語に対応し、180以上の国で使える電子署名立会人両型月額5,000円~/ユーザー
※無料プランあり
4.5
★★★★
☆☆☆☆☆

電子契約システムで業務効率化とコスト削減を図ろう

電子契約システムを選ぶ際は、対応している電子契約の種類や、必要な機能が搭載されているか確認する必要があります。セキュリティの強さや取引先の負担を軽減できるかといった導入メリットも考慮して各製品を比較し、最適な電子契約システムを見つけてください。

また、電子契約のメリット・デメリットを把握したうえで、自社に適した電子契約サービスを検討しましょう。

まとめ

電子契約とは、電子文書に電子署名することで成立する契約のことを言います。「電子署名」「タイムスタンプ」など一定の条件のもと、書面と同様の法的効力が認められています。クラウド上で契約締結することができるため、「印紙税の削減」「事務労力・事務経費の削減」「契約締結までのリードタイムの短縮」「保管・管理の効率化」「リモートワーク対応が容易」「契約更新の確認漏れ防止」「類似契約書の作成業務の効率向上」などの利点があります。

その一方、「契約締結数が少なく、明らかなメリットが望めない」「紙の契約書にこだわる取引先が多いため、紙とデジタルの両方を管理しなければならず、余計に手間がかかる」など、企業によっては不向きな場合もあります。「導入したら余計にお金と手間がかかるようになった」という事態を避けるためにも、事前にコスト面の試算・業務フローの確認はもちろん、紙とデジタルの割合などしっかり探っておきましょう。