秘密鍵と公開鍵とは?【仕組みと役割から安全性についてまでわかりやすく解説】

 秘密鍵と公開鍵とは?【仕組みと役割から安全性についてまでわかりやすく解説】

企業間のメール送受信やネットバンキング、ネットショッピングの支払いなど、情報の安全な伝達には暗号化が不可欠です。暗号化の理解には公開鍵と秘密鍵の役割を知ることが重要で、秘密鍵は限られたアクセス権を持つ者しか知り得ませんが、公開鍵は一般に利用可能です。

電子契約の導入に際して、セキュリティが重要視されており、電子契約にはオンラインで契約書を作成しやり取りするため、手書き署名や印鑑が直接できないという特異な点があります。契約書の電子化には改ざんやなりすましの懸念が存在しますが、安全な電子契約の実現には「公開鍵暗号」や「公開鍵基盤(PKI)」が積極的に活用されています。

本記事では 秘密鍵と公開鍵といった暗号技術についてわかりやすく解説します。

秘密鍵、公開鍵とは

秘密鍵と公開鍵は、情報の安全な取り扱いに欠かせない鍵で、主に暗号化と復号のプロセスで使用されます。これらの鍵は相互に関連しており、データを暗号化するのに使った鍵とは異なるもう一方の鍵が必要です。

この特性により、データの機密性や改ざんへの耐性が確保され、個人情報やパスワードの安全な管理、そして電子署名などが実現されています。

秘密鍵と公開鍵の主な違いは、鍵を所有する人物にあります。秘密鍵は特定の個人だけが知っており、一方で公開鍵は一般に公開されています。

これらの鍵は、ブロックチェーンネットワーク上での仮想通貨や暗号資産の取引においても不可欠です。公開鍵暗号(PKC)または非対称暗号は、数学的なプロセスを通じて安全な通信を実現するために使用され、トランザクションの信頼性を確認するのに役立ちます。PKCは、秘密鍵を持っていることを証明する一方通行の数学関数を提供し、データの真正性を確保します。

興味深いことに、どちらの鍵を使用するかは特定の目的に依存しており、その使い分けが重要です。

公開鍵の暗号方式(PKC)

PKC(Public Key Cryptography)は、「トラップドア関数」と呼ばれる基本的な数学の概念に基づいて構築されています。この概念は、一方向に計算することが容易ながら逆方向にはほぼ不可能な数学的問題に着目しています。

トラップドア関数の特徴は、計算を逆に行う難しさにあります。この問題を解くためには、通常、膨大な時間(数千年にも及ぶことがあります)が必要です。PKCの文脈では、素因数分解などの数学的トリックが、逆方向の計算をほとんど不可能にするトラップドア関数の一例です。具体的には、暗号署名のリバースエンジニアリング(偽造)を防ぐために、計算上ほぼ解決不可能な数学的問題をコンピューターに解かせる必要があります。

秘密鍵と公開鍵の暗号的な関連性

PKC(Public Key Cryptography)は、公開鍵と秘密鍵の組み合わせを利用して、セキュアでプライベートな通信を確立するための技術です。電子署名や電子証明においてもPKCが活用されています。

電子署名において、秘密鍵は個々のユーザーによって保持され、公開鍵は他のユーザーと共有されます。山田太郎は自身の秘密鍵から公開鍵を生成します。秘密鍵は山田太郎だけが知るべき情報であり、公開鍵は他のユーザーに提供され、山田太郎の電子署名の検証に使用されます。

具体的なプロセスとして、山田太郎が電子文書に署名する場合、彼は自身の秘密鍵を使用して署名を生成します。この署名は公開鍵を用いて他のユーザーによって検証可能です。電子署名により、文書の改ざんがないことや、署名者が本物であることが確認できます。

電子証明においても、PKCは重要な役割を果たします。山田太郎が電子証明書を取得する際、彼の秘密鍵と公開鍵のペアが生成され、認証局によって署名された電子証明書が提供されます。この電子証明書は、山田太郎の身元を確認するために利用され、安全な通信や取引において信頼性を提供します。

このように、PKCは電子署名や電子証明において、通信の安全性や文書の信頼性を担保する重要な技術です。

暗号化の必要性

公開鍵や秘密鍵を使用して情報を暗号化する理由を再確認しましょう。情報の暗号化は、主に情報の不正な流出の阻止や内部の不正行為を抑制する効果に役立ちます。それぞれのメリットも考えながら、これらの理由について詳しく説明します。

情報の不正な流出の阻止

仮に通信内容が不正な手に渡ったとしても、しっかりと暗号化された文書は解読が不可能です。暗号化された文書が漏れても、実際の情報は安全に保たれます。特に、高い秘匿性を備えた暗号方式を使用すれば、専門のツールを使用しても解読は非常に難しいでしょう。

近年では、常時SSL化されたウェブサイトが増加しています。SSL通信は、公開鍵暗号方式や共通鍵暗号方式を使用してユーザーの通信内容を保護します。SSL通信を導入することで、ブラウザから送信される個人情報が通信中に盗み読まれるリスクが軽減されます。これにより、サイトを利用する際には常に安全な環境でオンライン活動が可能です。

このように、秘密鍵と公開鍵は情報漏えいを未然に防ぐ仕組みとして、様々な状況で効果的に活用されています。

内部の不正行為を抑制する効果

公開鍵暗号方式では、復号には特定のユーザーが持つ秘密鍵が不可欠です。そのため、内部不正などにより暗号化されたファイルが外部に持ち出されたとしても、高い秘匿性が保たれます。重要なデータが流出しても、中身が読み取られない限り情報漏えいの心配はありません。

さらに、一部の暗号化ソフトには、遠隔操作でファイルを自動的に削除できる機能や、ファイルの追跡が可能な製品も存在します。これにより、流出したファイルの経路から内部不正を行った者を特定することができます。こうした機能が存在することが周知されれば、内部不正の試みも減少するでしょう。

公開鍵暗号方式における暗号アルゴリズムの種類

公開鍵暗号方式にはいくつかの暗号アルゴリズムの種類が存在します。代表的なものには、RSA暗号方式DSA署名方式、およびECDSA署名方式があります。これらの暗号化方式について詳細に解説します。

RSA暗号方式

RSAは「Rivest-Shamir-Adleman cryptosystem」の略で、これは公開鍵暗号方式の代表的な形式の一つです。RSAは単に公開鍵暗号方式だけでなく、デジタル署名にも使用されます。

RSA暗号方式では、公開鍵を生成するために素数の積が利用され、それを元にして秘密鍵が生成されます。桁数の多い数字を素因数分解する際、総当たり以外に適切な素因数を見つける方法はなく、コンピュータを用いても膨大な時間がかかります。通常、2,048ビットの鍵長が使用され、これはスーパーコンピュータでも解読が極めて困難なため、RSAの暗号化は高い安全性を提供しています。

DSA署名方式

DSADigital Signature Algorithm)は、デジタル署名に特化した暗号化方式で、離散対数問題と呼ばれる数学的手法を駆使しています。この手法は、素数pと自然数gが与えられた場合、ある自然数xに対してgのx乗をpで割った余りyを求めることは容易であるが、逆にyからxを求めることが極めて困難であるという数学の問題に基づいています。

DSA暗号方式では、この離散対数問題を利用して、素数pや自然数gからyを含む公開鍵を生成し、またxから秘密鍵を生成します。この独特の仕組みにより、DSAは主にデジタル署名に使用され、データの真正性を確認するための堅牢なセキュリティを提供します。

ECDSA署名方式

ECDSAElliptic Curve Digital Signature Algorithm)は、楕円曲線上の離散対数問題を応用したデジタル署名方式の略称です。この公開鍵暗号方式は、DSAよりも鍵長が短くても同等の安全性を確保できるという特徴を持っています。

ECDSA署名方式は、楕円曲線と呼ばれる数式に基づき、特殊な加算法(楕円曲線上の有理点同士の加算)を基本的な計算として利用します。この手法により、公開鍵と秘密鍵を生成し、デジタル署名を行います。楕円曲線の利用によって、セキュリティを確保しつつ短い鍵長を実現できるため、効率的で高度な暗号技術として注目されています。

電子証明書とは

電子証明書は、公開鍵が特定の当事者に帰属していることを立証するための公的な証明書です。この証明書は信頼できる第三者機関によって発行され、その中には公開鍵の詳細や発行者の情報が含まれています。

たとえば、法務省が認定機関として機能し、法人の代表者の資格を確認する商業登記電子証明書には、以下の内容が含まれています。

公開鍵と電子証明書の関係

秘密鍵に対応する公開鍵の正当性を保証する電子証明書

電子証明書には、公開鍵の所有者に関する情報や発行者のデータが含まれています。これらの証明書は信頼性のある第三者機関である認証局によって発行され、電子署名が付与されます。この仕組みにより、公開鍵の信頼性が確保されます。

電子契約を行う場合、当事者は公開鍵をやりとりしますが、相手方が本当に正当な当事者かどうかの確認が課題です。これを解決するためには、信頼性の高い第三者機関によって発行された電子証明書を利用し、公開鍵の妥当性を確認します。

公開鍵と電子証明書のデータ構造

公開鍵は、公開鍵暗号技術において一般に知られている鍵で、だれでもアクセスできるものです。対照的に、電子証明書は公開鍵が特定の当事者に属していることを確認するための証明書であり、通常は信頼性の高い第三者機関によって発行されます。電子証明書には、公開鍵の詳細とともに発行者に関する情報も含まれています。

実際には、公開鍵と電子証明書はほぼ同じデータ構造を共有しています。電子証明書には公開鍵の情報に加えて、発行者の詳細や証明書の有効期限などが含まれています。そのため、公開鍵と電子証明書はしばしば一緒にまとめて表現されることがあります。

X.509規格で規定された公開鍵と電子証明書のフォーマット標準

X.509は、国際標準化機構(ISO)国際電気通信連合(ITU)が共同で制定した公開鍵証明書の標準化基準です。この規格では、証明書のフォーマットについての標準が規定されています。

X.509フォーマットでは、公開鍵と証明書が1つのファイルにまとめられます。このため、公開鍵と電子証明書が同じデータ構造に見えることがありますが、実際には異なるデータです。特に電子契約などで使用する際には、公開鍵と電子証明書を正しく区別し、認識することが重要です。

公開鍵と電子証明書は本来は別々のデータですが、X.509規格ではこれらを1つのファイルにまとめて取り扱うことができるため、利便性が向上します。

電子署名における公開鍵と電子証明書の役割

電子契約において、法的な効力を持つ電子署名の要件として、署名者の確実な識別と署名の改ざん防止が不可欠です。このため、公開鍵と電子証明書が利用されます。

まず、署名者は自身の秘密鍵を使用して署名を生成します。この署名には、署名者の特定情報が含まれています。次に、署名を検証する相手は、署名者の公開鍵を用いて署名の妥当性を確認します。

このプロセスで相手方は、署名者の公開鍵が本物であることを確認する必要があります。そのためには、署名者の公開鍵に対応する電子証明書を入手し、発行者が信頼できるものであるかを検証します。そして、電子証明書の情報を通じて、署名者の公開鍵が正当であるかを確認します。

この手順により、署名者の正確な識別情報と署名の改ざんがないことが確認され、法的な要件が満たされます。

まとめ

公開鍵暗号方式は、通信内容を公開鍵で暗号化し、それを秘密鍵でのみ復号できる仕組みを提供しています。秘密鍵は特定のユーザーにしか保持されず、これにより高い秘匿性を確保しています。物理的に暗号化ファイルが持ち出されたとしても、中身が解読されない限り情報漏えいの心配はありません。さらに、ソフトウェアを用いては流出経路を追跡し、犯人を特定することが可能です。

秘密鍵と公開鍵は、電子署名や電子契約システムにおいて情報の安全性を担保するために不可欠です。秘密鍵の厳重な管理と公開鍵の信頼性の確保が肝要です。電子署名や電子証明書を組み合わせることで、取引の透明性と法的効力を向上させつつ、セキュリティリスクを最小限に抑えることが可能です。これにより、現代のビジネス環境において安心して電子契約を行うための堅固な基盤が確立されます。