印章とは?【印鑑との違いや種類、電子契約の印鑑まで詳しく解説】

2021年9月1日、デジタル庁の発足に伴い、企業の業務デジタル化、電子契約の進展、および押印業務の電子化が推進されています。この流れは、マイナンバーカードと保険証の連携を促進し、将来的には日常生活の様々な側面で電子化が一層進展することが見込まれます。

しかし、現在でもビジネスにおいては紙の契約書が依然として不可欠であり、印鑑の使用も一般的です。

本記事では、印章や印鑑についての用語の違いや多様性、電子化による恩恵などに焦点を当て、これらに関する包括的な解説を行います。

印鑑の電子化を検討している企業や関係者の方々は、本記事の内容を詳細に参照し、将来の戦略的意思決定において役立てていただければ幸いです。

印章・印影・印鑑の違い

広く一般の方々が日常的にご利用されるハンコには、「印章」「印鑑」「印影」といった複数の呼称が存在し、これらはそれぞれ異なる概念を指しています。ここでは、これらの呼び名に潜む微妙な違いについて詳細に掘り下げてみましょう。

印章とは

印章」は、通常、ハンコの本体を指す用語です。しばしば、「印鑑」という表現がハンコ本体を指す際に用いられますが、これは正確な表現ではなく、正確には「印章」や「ハンコ」と呼ぶべきです。

実際のところ、一般の社会では「印鑑」と「印章(ハンコ)」は同じ意味として認識され、これらの用語を厳密に使い分けることは稀です。従って、日常生活で厳格な使い分けを心がける必要はありませんが、印鑑と印章が異なる概念であるという知識を把握していただくことが望ましいです。

このような微妙な違いを理解することで、文書の法的な文脈や意味合いにおいて、より適切な用語を選択できるようになります。

印影とは

印影」とは、ハンコに朱肉を塗り、それを紙に押してできる、朱肉の跡を指します。一般的な生活では、荷物の受け取りや書類の手続きなどで、「ここにハンコを押してください」という指示を受けることがあります。しかしながら、これは正確な表現ではありません。

厳密な言葉遣いで述べれば、「ここにハンコを押して印影を作成してください」となります。ただし、一般の生活では、このような微細な違いを厳格に区別することは少ないです。印影についての詳細な解説も以下で行っておりますので、ご参照いただければ幸いです。

印鑑とは

印鑑」は、特定の印章に由来し、その印章を押して残される印影が銀行印や実印として正式に登録されたものを指します。この定義はやや複雑ですが、要するに、印章を使用して得られる印影が銀行や役所で公式に登録されたものが印鑑とされます。従って、一般的なお店で販売されている印章を「印鑑」と呼ぶのは正確な表現ではありません。

印鑑と判子(ハンコ)の違い

印鑑と判子の違いについて、頻繁に質問をいただきます。再度強調いたしますが、これらは一見すると同じように見えるものの、厳密には異なる概念です。

初めに、「印鑑」は官公庁に正式に登録された「実印」や銀行に登録された「銀行印」の印影を指します。印影とは、判子を押した際に紙に残る朱肉の痕跡のことです。

これに対し、「判子」とは手に持つハンコ本体のことを指します。厳密に言えば、正式名称は「印章」であり、漢字表記は「判子」ですが、これはあくまで当て字となります。

一般的にはハンコ本体を指して「印鑑」と呼ぶことが多いですが、これは正確ではありません。なぜなら、「印鑑」は印影のことを指し、ハンコ本体を表すものではないためです。

印鑑と判子(ハンコ)の語源

印鑑と判子の概念をより深く理解するために、これらの語源についてご紹介いたします。

まず、「印鑑」の語源は、「印(しるし)」と「鑑(かん)」に由来します。ここでの「印」は、特定の個体や団体を識別するための印章の意味を持ち、「鑑」は模様や印影を指します。従って、「印鑑」は印章に刻まれた模様や印影を示し、特に実印や銀行印の公的な登録を指すものとなります。

一方で、「判子」の語源は、「判(はん)」と「子(こ)」から派生しています。ここでの「判」は刻まれた模様や印影を指し、「子」は小さなものや器具を示します。従って、「判子」は、模様の刻まれた小さな印章や印影を指す言葉となります。漢字表記は「判子」ですが、これは意味合いにおいて当て字とされます。

これらの語源を踏まえると、「印鑑」は主に公的な登録がなされた印章の印影を指し、「判子」は印章や印影全般を包括する幅広い意味を持っています。

印鑑の種類

ハンコには様々な呼び名や種類が存在し、それぞれ異なる意味合いがあります。これに加えて、ハンコにまつわる語源についてもご紹介させていただきました。

次に、実際に日常で使用されている印鑑(ハンコ)の主な種類に焦点を当ててみましょう。広く知られているのは、認印、実印、銀行印、角印の4つです。

認印

認印」とは、書留や荷物の受け取りなど、簡易な業務に適したハンコです。この種の印鑑は、実印と異なり、市区町村に登録する必要がありません。一般的には文房具店や100円ショップなどで容易に入手でき、必要な際に手軽に購入できます。

また、シャチハタのようなインク浸透印も認印として活用されますが、注意が必要です。なぜなら、経年によりインクが色褪せしやすいとされ、またゴム製の場合も時間とともに劣化し、印影が変化する可能性があるからです。

このため、印影の届出が必要な書類には適さず、あくまで普段使いの範疇で広く利用されています。

実印

実印」とは、本人の住民票が所在する市区町村に正式に登録され、公的な承認を受けた印鑑を指します。実印は通常、高額な取引に関連する書類において必要とされます。これには不動産の取引、官公庁での手続き、ローンの組成や保険の加入など、本人確認が不可欠な重要な場面が含まれます。

また、これらの重要なシーンにおいては、実印だけでなく、印鑑証明書も同時に必要となります。印鑑証明書は、実印が正式に登録されていることを確認する文書であり、取得方法については後程詳しく説明いたします。

銀行印

銀行印」とは、銀行や他の金融機関に登録されている印鑑のことを指します。通常、新しい口座を開設する際や窓口で預金を引き出す際、または登録内容に変更がある際などに使用されます。

認印と比較すると、銀行印の利用頻度は少なく、一般の方にはあまり馴染みがないかもしれません。しかし、資金の引き出しにおいて極めて重要な印鑑であり、例えばATMを利用する場合、引き出し可能な金額には上限が設けられています。そのため、上限を超える高額な引き出しを行う場合には、預金者の本人確認が必要となり、銀行印が窓口で必要になります。

このように、銀行印は自身の財産に関連する重要な印鑑であり、紛失や盗難には特に気を配り、管理を徹底する必要があります。

角印

角印」とは、印面が四角い形状を有するハンコを指します。その印象的な大きさから、時折実印にも見受けられるかもしれませんが、実際には主に認印として使用されます。そのため、実印のように届け出が必要ないのが特徴です。

同様に、「角印」は「社印」とも呼ばれます。これら二つの用語には顕著な違いはありませんが、ビジネス環境においては、通常はハンコに会社名が刻まれることが一般的ですから、「社印」という呼称も用いられます。

使い分けを試みるならば、手紙や年賀状などに使用される、四角い印面を有するイラスト入りのハンコを「角印」と呼ぶことがあります。対照的に、ビジネス上で角印を使用する際には、通常は会社名が刻まれているため、「社印」としても適切です。

印鑑登録・印鑑証明の手続き方法

印章やハンコにおいて、法的な効力を有し市区町村に正式に登録されるのが実印です。では、実印としての印鑑登録を行い、印鑑証明書を入手するためには、どのような手続きが求められるでしょうか。

個人と法人という二つの異なる立場から、印鑑登録および印鑑証明書の取得手続きについて詳細に解説いたします。

印鑑登録の手続きの方法

まず最初に、印鑑登録を行う手続きについて、順を追って詳細にご説明いたします。

個人の印鑑登録

個人の印鑑登録手続きを行うには、本人が住民登録している市区町村の役場にて手続きを進める必要があります。市区町村によっては特定の指定手続きがある場合がありますが、一般的には以下の書類を用意してください。

  • ご本人の顔写真付きの身分証明書
  • 印鑑(実印)本体

この手続きにおいて留意すべき点は、市区町村ごとに異なる指定事項がある可能性があるため、事前に詳細を確認しておくことが重要です。

実印のハンコを登録する際には、自身の身分を役所が確認する必要があり、そのためには顔写真が付いた身分証明書が必須となります。印鑑登録の条件として、15歳以上であることが求められるため、身分証明書の提出が必要です。

なお、登録する実印の印影サイズは通常、「8㎜以上25㎜以下」とされていますが、市区町村によっては独自に規定がある場合があります。従って、手続きを行う前には市区町村の窓口や公式ホームページで事前に確認が必要です。

手続きが完了すると、カード型の印鑑登録証が発行され、以降の印鑑証明書の取得にはこの印鑑登録証の提出が必要となります。

法人の印鑑登録

次に、法人が印鑑登録を行う手続きについても解説いたします。法人の場合、印鑑登録は本店の所在地を管轄する法務局で実施されます。

法人登記が行われている法務局が印鑑登録の担当となりますので、法人は法務局の窓口で手続きを行う必要があります。本店を管轄する法務局についての情報は、法務局の公式ホームページで事前に確認してください。

法人の印鑑登録に必要な書類は以下の通りです。

  • 会社の実印(代表者印が基本)
  • 代表者本人の実印
  • 代表者本人の印鑑証明書(発行後3カ月以内のもの)

代表者本人の印鑑証明書は、登記申請書の提出に使用したものをそのまま利用することもできますので、希望する場合は該当項目にチェックを入れましょう。

法人の印鑑登録において、印鑑のサイズは「辺の長さが1㎝を超え、3㎝以内の正方形の中に収まるもの」と規定されています。印鑑の形状は角型でも丸型でも問題ありませんが、一般的には丸型の印影の外側には会社名、内側には役職名を刻むことが一般的です。

印鑑登録が完了したら、印鑑カードの手続きも同時に行いましょう。印鑑カードは、印鑑カード交付申請書を提出することで取得できます。

印鑑証明書の発行手続き

印鑑登録が完了すると、個人および法人ともに印鑑カードを利用して印鑑証明書を簡便に発行できるようになります。それぞれの発行手続きについて詳しくご紹介いたします。

個人の印鑑証明書

個人が印鑑証明書を取得するには、以下の3つを用意する必要があります。

  1. 印鑑登録証(印鑑登録カード)
  2. 顔写真付きの身分証明証
  3. 発行手数料

これらの書類と手数料を備え、所在地の市区町村の役場にて発行手続きを行います。なお、一部の自治体ではコンビニでも印鑑証明書の発行が可能な場合があるため、詳細は事前に確認してください。

印鑑登録証が紛失または損傷した場合は、再度同じ手続きを踏む必要があります。再登録の際には、元と同じ印影である必要はなく、異なる印影のハンコでも構いません。

法人の印鑑証明書

法人が印鑑証明書を取得するには、各自治体の法務局や郵送、オンラインサービスを利用できます。法務局での手続きを選択する際には、以下の2つを用意してください。

  1. 印鑑カード
  2. 発行手数料分の収入印紙

法務局で印鑑証明書を取得する場合、印鑑証明書交付申請書には会社の商号、住所、印鑑提出者の資格、氏名、生年月日、印鑑カード番号が必要です。証明書発行請求機が設置されている法務局では、申請書の記入は不要です。

郵送を選択する場合は、法務局のホームページから印鑑証明書交付申請書をダウンロードし、必要な収入印紙と印鑑カード、切手を貼った返信用封筒を同封して発送します。

オンライン申請を利用する場合は、登記・供託オンライン申請システムに登録が必要です。ただし、窓口や郵送よりも手続きが迅速で、効率的に印鑑証明書を入手できます。法人の印鑑証明書発行は、利便性の高い手段を選択することがお勧めです。

印鑑照合方法

印鑑証明書が必要な書類の場合、提出された書類の印影と印鑑証明書の印影を正確に照合する手続きが行われます。これを印鑑照合と呼びます。以下に、印鑑照合の主な方法を紹介します。

  • 平面照合
    印鑑証明書と対応する書類の印影を隣り合わせにし、一致するかどうかを比較する方法です。この手法は基本的に法廷でも有効とされています。ただし、微細な差異は目視では難しく、完璧な一致を見逃す可能性があります。
  • 残影照合
    印鑑証明書と書類の印影を重ね、高速でめくったときの残像を確認する方法です。
  • コンピュータを使った照合
    印鑑証明書と書類の印影をスキャンし、コンピューターで画像を比較する方法です。
  • 拡大鏡を使った照合
    細部まで確認するために拡大鏡などを使用する方法です。
  • 透かして照合
    印鑑証明書と書類の印影を重ね、光を透かして確認する方法です。

これらは代表的な印鑑照合の手法であり、通常は複数の手法を併用して行われます。特に平面照合が一般的ですが、他の手法も組み合わせて使用されることがあります。

電子署名なら印鑑と同等の法的効力がある

印章を使用せずとも、現在では電子契約書に署名することで、印鑑と同様の法的効力が発生します。ビジネス取引や契約締結のプロセスが効率的に進むため、電子署名の活用は非常にお勧めです。

電子署名は、電子証明書とタイムスタンプの2つの仕組みを組み合わせています。まず、電子証明書は信頼性のある第三者機関である認証局を通じて取得され、公開鍵暗号方式により安全性が確保されています。この方式では、署名者と受信者以外には解読できない暗号が使用され、署名者が本人であることが確認できます。

また、タイムスタンプは改ざんを証明する機能を持ち、文書がいつ作成され、その後改ざんされていないことを時刻情報で確認します。通常の紙の書類では改ざんの時期を正確に追跡することが難しいですが、電子署名にはタイムスタンプが付与されることで改ざん時刻も厳密に記録されます。これらの仕組みにより、電子署名も印鑑と同等の法的効力を有しています。

電子署名を契約プロセスで活用するメリット

電子署名を契約プロセスで活用する際の利点についてご紹介いたします。

電子署名を導入する主なメリットは、迅速で効率的な契約手続きを実現することです。伝統的な紙文書と印鑑を使用するプロセスに比べ、電子署名を採用することで取引先とのコミュニケーションが円滑に進みます。以下に、電子署名導入の具体的な利点をいくつか挙げてみましょう。

  1. 迅速な取引締結 
    電子署名を利用すると、契約書のやりとりや署名が迅速に行えます。物理的な郵送や待ち時間が不要なため、ビジネスプロセスのスピードが向上します。
  2. 遠隔地での契約締結
    電子署名はオンライン上で完結するため、取引相手が遠隔地にいても契約手続きを円滑に進めることができます。物理的な距離や国境を越えて、迅速かつ効果的なコラボレーションが可能です。
  3. 正確性とトレーサビリティ
    電子署名はデジタルな形式で保存され、細部まで正確に記録されます。契約文書の変更履歴や誰がいつ署名したかなど、トレーサビリティが高まります。
  4. セキュリティと法的効力
    電子署名は通常、高度なセキュリティプロトコルと法的な枠組みに基づいています。これにより、署名の真正性や契約書の完全性が確保され、法的な効力が認められます。
  5. 環境への負荷軽減
    電子署名の採用は紙の使用を減少させ、環境への負荷を軽減する一環となります。デジタルな手続きは環境にも優しいアプローチです。

これらのメリットから、多くの企業や法務部門が電子署名を導入し、ビジネスプロセスを近代化・効率化しています。

まとめ

印章」とは、ハンコ本体を指します。対照的に、「印鑑」は実印や銀行印の印影を指す表現であり、正確ではなく、印影自体を指します。一方で、「印影」は、紙に残る朱肉の痕跡を指します。

ハンコの語源についても複数の説がありますが、これらの起源を知ることで、日頃使うハンコに新たな趣を見いだせることでしょう。

ハンコには認印、実印、銀行印、角印などがあり、それぞれの特徴や使用される場面についても紹介しました。特に実印は公的機関への届け出が必要であり、印鑑登録を忘れずに行うよう心がけましょう。印鑑登録を終えることで、印鑑証明書の発行もスムーズに行えます。

印鑑証明書が必要な書類の場合、提出した書類と印鑑証明書の印影が正確であるかどうかが調査されます。これが印鑑照合と呼ばれ、さまざまな手法が存在します。さらに、現代では電子契約も一般的となっており、取引先とのスムーズな契約を望むならば電子署名を検討することもおすすめです。