法人印鑑は、企業や組織が業務を遂行する際に利用される印鑑の総称であり、通常は5つの主要な種類に区分されます。これらの法人印鑑は、文書や手続きの性質に応じて使い分けられ、それぞれが異なる用途や形状を有しています。従って、各印鑑の特徴を理解しておくことは重要です。
多くの方が会社で使用されている印鑑として認識しているかもしれませんが、その具体的な役割や種類に関しては十分に理解されていないこともあるでしょう。
法人印鑑には通常、5つの主要な種類が存在し、それぞれが異なる文書や手続きに使用されます。状況に応じて使い分けが求められるため、各印鑑の特徴を理解しておくことが肝要です。
この記事では、法人印鑑の各種類やその特性、効果的な使用方法について、詳細に解説していきます。
法人印鑑とは
法人印鑑は企業や団体の運営において、契約書などの重要な文書に使用される会社印の総称です。
企業や団体が業務を遂行する上で、契約締結や銀行口座の開設など重要な場面では、記名や印鑑が必要です。同様に、納品書や郵便物の受け取りなど日常業務においても印鑑は頻繁に使用されます。
法人印鑑には一般的に5つの主要な種類があり、それぞれが異なる用途や形状を持っています。組織が円滑に機能するために、会社設立時には書類や業務内容に適した複数の印鑑を作成することが通例です。
法人印鑑の種類
法人印鑑には主に代表印、会社銀行印、会社角印の3つの基本的な種類が存在します。これに加え、会社認印や会社の住所が入ったゴム印などもあり、これらを組み合わせて使用することがあります。専門的な文書や業務に応じてこれらの印鑑を選定し、使い分けることが一般的です。以下では、法人が頻繁に使用する5つの主要な印鑑について詳しく説明します。
代表印(会社実印・法人実印・実印)
代表印、別名「会社実印」や「法人実印」は法人設立時に法務局に登録される最も重要な印鑑であり、企業において最も厳粛なものとされます。この印鑑は、法人を代表して行動する際に使用され、契約書や官公庁への提出書類などに押印されます。代表印の印影は円環状で、印面は通常二重構造となっています。円の外側には企業名が、円の内側には役職名が刻まれるのが一般的です。
代表印は通常18~20mmほどの大きさで制作され、商標登記規則によって以下の条件が規定されていますので、これに基づいて作成されることが推奨されます。
印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであってはならない。
【参考】商業登記規則 | e-Gov法令検索 9条3項
会社銀行印(法人銀行印・銀行印)
企業が銀行で口座を開設する際や各種手続きにおいて使用されるのが、会社銀行印(法人銀行印または銀行印)です。他の法人印鑑をそのまま使用することも可能ですが、盗難や紛失のリスクを軽減するために、通常は専用の印鑑を作成します。
代表印と同じく円環状の印影で、印面は通常ならば二重構造となっています。円の外側には企業名が刻まれ、円の内側には「銀行之印」という文字が入るのが一般的です。サイズに特定の制限はなく、通常は代表印との区別を容易にするために小型に仕上げられることが多いです。
会社角印(会社印、社印)
会社角印(会社印または社印)は、日常業務で広く使用される法人の印鑑です。代表印とは異なり、法務局への登録が不要であり、サイズにも特定の制限が課せられていません。
この印鑑は見積書、請求書、領収書など企業が発行する書類の認印として活用されます。典型的な特徴は印影が四角く、印面には企業名のみが刻まれています。
なお、商業登記規則の要件を満たしていれば、会社角印を代表印として登録することも可能です。ただし、代表印は企業にとって極めて重要なものであり、その使用を日常的に行うことはコピーや悪用のリスクを伴います。したがって、会社角印は代表印や銀行印とは別に作成することが勧められます。
会社認印
会社認印は、主に書留や荷物の受け取りなど、簡易かつ日常的な業務に使用される法人の印鑑です。形状や内容に厳格な決まりは存在せず、一般的には印影が円形で、印面には社名や代表者名が刻まれています。
会社角印との違いは、使用される書類や業務の重要度にあります。会社角印はより重要な書類や業務に利用される一方、会社認印は日常的で簡易な業務に適しています。
したがって、使いやすさを考慮してインク浸透印を使用するなど、日常業務においてより手軽に利用できる工夫ができます。
ゴム印(住所印)
ゴム印、通常は住所印とも称され、主に納品書や領収書などの書類に組織名や住所、電話番号などを記載する際に使用される印鑑です。
形状や用途に厳格な規定はなく、印面には一般的には組織名、代表者名、住所、電話番号などが刻まれています。会社認印と同じく、インク浸透印が利用される場合もあります。
ゴム印は必須ではありませんが、日常業務で書類に住所や電話番号を記入する頻度が高いため、作成しておくことで担当者の手間を軽減できるでしょう。
法人印鑑の登録方法
法人の設立時には、代表印としての印鑑登録が不可欠であり、これにより印鑑証明書を入手することができます。一方、個人の印鑑登録は市区町村で行いますが、法人の場合は法務局で手続きを行います。
法人の設立に伴う登記申請もまた法務局で行われるため、登記申請と印鑑登録は同時に進めることが可能です。法人印鑑の登録手続きは、以下の手順に従います。
STEP1:事業所本部を管轄している法務局へ印鑑届書を提出する
STEP2:印鑑カード交付申請書を提出する
STEP3:印鑑カードを受け取る
管轄の法務局は法務局の公式サイトで検索できるので、以下のリンクからご確認ください。
→ 管轄のご案内(法務局)
「印鑑届書」とは、代表印を登録する際に必要な書類のことです。こちらも法務局の公式サイトからダウンロードできるので、以下のリンクからご確認ください。
→ 登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式 (法務局)
印鑑届書を提出する際には、法人の印鑑だけでなく、提出者の個人実印と印鑑証明書(発行から3ヵ月以内)が必要とされます。これらを代表印と共に準備しておくことが重要です。
印鑑カードの受け取りは、会社設立時には義務づけられていない手続きですが、印鑑証明書を入手する際には印鑑カードの提示が必要です。将来的に必要になる可能性があるため、法人設立時に同時に手続きを完了させておくことをお勧めします。
オンライン申請時の印鑑登録は「任意」
法人登記の申請は、かつては法務局の窓口での手続きが一般的でしたが、現在ではオンラインでの申請も可能です。以前は法人を設立する際には印鑑届書の提出が必須でしたが、令和3年2月15日からは、オンラインで登記申請を行った場合は登記所への印鑑届出書の提出が任意となりました。
印鑑の登録は法的に義務づけられていなくなりましたが、引き続き登録することが推奨されます。金融機関から融資を受けたり、行政に許認可を申請する際など、実印の使用が求められるケースが多いためです。
印鑑登録をしないと印鑑証明書を入手できない点に留意すべきです。金融機関などから印鑑証明書の提出が求められる可能性がある場合は、事前に印鑑登録を行っておくことが重要です。
なお、以前は法人の登記申請をオンラインで行った場合でも、印鑑届書の提出は郵送または窓口での手続きが必要でしたが、令和3年2月15日からはオンラインでの登記申請時に限り、印鑑届の提出もオンラインで行えるようになりました。
詳細は法務省の公式サイトをご確認ください
→ オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記)(法務省)
印鑑の使い方
先行のセクションでは印鑑のカテゴリに焦点を当てましたが、同一の印鑑であっても、使用する文書や特定の目的によってその使途が異なります。ここでは、印鑑の使い方に関する5つのケースを紹介いたします。
押印
押印とは、署名以外の手段で名前や組織名を表すために印を押す行為です。捺印は署名と同様に自筆で行う印鑑の使用を指します。
割印
割印とは、2つの文書が対であることを示すために、それぞれの書類にまたがって印を押す手続きです。主に契約書の原本と写し、あるいは正本と副本など、2つの関連する書類に用いられます。割印は、文書の信頼性や一貫性を確保するために行われる重要な手段の一つです。
契印
契印は、契約書が複数ページにわたる場合に、一連の書類であることを示すために、各ページにまたがって印を押す手法です。
この手法は主に引き抜きや改ざんを防ぐために採用され、契約書全体にわたり印を押すことで一貫性を確保します。
捨印
捨印は、事前に書類の余白に押印しておくことで、必要に応じて訂正印として利用できるようにする手法です。
捨印をあらかじめ押しておくことで、訂正が必要な場合に都度訂正印を使用する手続きを省くことができます。
捨印は書類において必ずしも必須ではなく、使用する際には相手方の合意が必要です。また、捨印を事前に押しておくことで、相手方による書き換えの可能性があるため、慎重に使用する必要があります。安易に捨印を使用することは避け、慎重に検討しましょう。
消印
消印は、主に印紙税の対象である収入印紙や郵便切手に押されるものであり、これによって再利用を防ぎます。収入印紙に消印を押すことで納税の証明が行われ、消印が押されていない場合には過怠税の対象となります。したがって、収入印紙を使用した場合には、適切なタイミングで消印を押すことが重要です。
まとめ
このたびは法人印鑑に焦点を当て、その多様な種類と異なる用途について詳しく説明いたしました。
法人印鑑には代表者印、会社銀行印、会社角印、会社認印、ゴム印の5つの主要な種類が存在します。特に代表者印は会社実印として位置づけられ、法務局での印鑑登録手続きが必要です。印鑑届出書に必要事項を入力し、印鑑カードを入手することで手続きが完了します。印鑑カードは将来的に印鑑証明書を発行する際に必要となるため、大切に保管しておく必要があります。
また、法人印鑑には押印、割印、契印、捨印、消印といった様々な使い方があります。それぞれの機能を整理し、状況に応じて正確に利用できるよう心がけましょう。
特に消印においては、収入印紙の消印を忘れることがあるかもしれません。しかし、これを忘れると後々手間がかかる可能性があるため、細心の注意が必要です。