電子署名と電子証明書の違いとは?【仕組みや役割からメリットまでわかりやすく解説】

電子署名と電子証明書の違いとは?【仕組みや役割からメリットまでわかりやすく解説】

社会的にはペーパーレスが奨励され、様々な状況で電子署名が広く活用されています。電子署名は業務の効率向上やコスト削減など多くの利点がありますが、一部の方々はその具体的な機能に不慣れかもしれません。

そこで、本記事では電子署名の基本的な概要や、「電子証明書」と混同されがちな点に焦点を当て、初めてこれらの言葉を聞く方でも理解しやすいように解説していきます。

電子署名とは

まず初めに、電子署名の機能や役割について詳しく説明します。

電子署名は紙文書における印鑑やサインの代替

電子署名は、電子文書に付与される電子的な署名で、「電子文書が署名者の真正な意思に基づいて作成されたことの証明」と「文書が不正に改ざんされていないことの証拠」を示します。かつての紙書類では、印鑑やサインを通じて本人確認や文書の完全性を証明していました。電子署名は、これらの印鑑やサインと同様の役割を果たします。

同意の表明と契約内容への同意の証明

電子署名は、契約内容への同意を示す重要な手段です。特にリモートワークが増加する中、電子文書のやり取りが一般的になっています。一部で電子印鑑の法的有効性に疑問の声も聞かれますが、2001年に施行された「電子署名及び認証業務に関する法律」(通称:電子署名法)により、電子署名は実物の印鑑やサインと同等の法的効力を持つことが明確に規定されました。

紙書類における押印に関しては、民事訴訟法第228条により以下の通り述べられています。

紙に記載され、押印もしくは、署名された文書等(契約書等の文書、議事録等)は、真正に成立すると推定される

民事訴訟法第228条

同様に、電子署名についても電子署名法第3条で、「本人だけが行うことができる」方法で行われている場合に法的な有効性が示されています。

電磁的な記録である電子文書においては、本人による電子署名が行われている場合には真正に成立したものと見なされます。この際、「本人だけが行うことができる」方法については、後述する「電子証明書」が証明する仕組みとなります。

同意の本人確認ができない場合も存在

一方で、本人による同意が確認されないケースも存在します。電子署名と呼ばれる手法の中には、脆弱性を抱えたものも見受けられます。具体的には、印鑑の印影をスキャンしてパソコンに取り込んだ画像が挙げられます。このような場合、電子文書に印影の画像を捺印すれば、「電子署名」として認識されることになります。ただし、このままでは簡単にコピーが作成でき、悪用のリスクが回避できません。さらに、印鑑そのものが偽造される危険性も考えられます。このような簡易的な電子署名には法的な有効性がなく、ビジネス環境での使用においては慎重な注意が必要です。

電子証明書とは

次に、電子証明書の役割や機能について説明いたします。

電子証明書は紙文書における印鑑証明書に相当

重要な文書には通常、電子署名とともに電子証明書が添付されています。電子証明書は、公開鍵を利用する電子署名の所有者を信頼性のある第三者である認証局が証明するもので、紙文書で言えば、電子証明書は印鑑証明書に相当します。

署名者の本人性と文書の非改ざん性を確認

電子証明書は主に署名者が使用しますが、文書を受け取る側も添付された電子証明書を用いて署名者の本人確認を行えます。また、タイムスタンプを活用して電子証明書が付与された日時を記録することで、署名者の本人性だけでなく、文書が発行された時点における非改ざん性も確認できます。

認証局が発行する第三者機関の証

電子証明書は認証局(CA:Certificate Authorities)と呼ばれる第三者機関によって発行されます。公的な信頼を得ているパブリック認証局は厳格な監査基準とセキュリティ体制を有し、電子文書の正当性を確認します。社外との契約書では通常、パブリック認証局が利用されます。一方、プライベート認証局は主に社内などで用いられ、社内端末に発行された電子証明書を用いて確認が行われます。

契約書の内容は電子証明書の対象外

重要なのは、電子証明書が確認するのは「署名者の本人性」と「電子証明書が発行された時点における文書の非改ざん性」であり、契約書の中身が正当であるかは対象外であることです。契約書の内容の正当性は公開鍵と秘密鍵を用いて確認されます。

電子署名と電子証明書の違い

電子署名と電子証明書には、契約書における役割、証明できるもの、証明する人といった3つの観点から異なる特徴があります。

1. 契約書における役割

電子署名は、契約書において署名者が文書に対する同意や承認を示すための手段として機能します。一方で、電子証明書は電子署名の信頼性を裏付け、署名者の本人確認や文書の非改ざん性を証明する役割を果たします。電子署名が「署名すること」に焦点を当てるのに対し、電子証明書は「署名の信頼性を確保すること」に焦点を当てています。

2. 証明できるもの

電子署名は、主に署名者の同意や承認といった行為を証明します。これは契約書において署名者が文書に対する責任を負っていることを示します。一方で、電子証明書は署名者の本人性と文書の非改ざん性を確認します。電子証明書が付与された電子署名は、それが本物であり、かつ文書が発行された時点で改ざんされていないことを証明します。

3. 証明する人

電子署名は、署名者自身が行います。すなわち、文書に署名をすることで、署名者がその文書に同意したことを示します。一方で、電子証明書は認証局(CA)と呼ばれる第三者機関が発行します。認証局は署名者の本人性を証明し、電子署名が信頼性を持つものであることを保証します。これにより、電子署名と電子証明書の組み合わせが、文書の安全性を確保するのに寄与します。

これらの要素から見ると、電子署名と電子証明書は、契約書において異なる役割を果たし、異なる側面を証明します。

電子署名の仕組み

これまで述べてきたように、セキュリティの確保された電子署名には「電子証明書」が不可欠です。 電子証明書を備えた電子署名を利用することで、オフィス環境でも安全かつ確実に電子契約書などの電子文書を取り扱うことができます。 それでは、電子署名のメカニズムについてもう少し詳しく説明いたします。

電子証明書の発行プロセス

電子署名を添えた電子文書を、安全に契約相手とやり取りするためには、公開鍵暗号方式と呼ばれるセキュリティシステムを使用し、相互に本人確認を行いながら通信を行います。

公開鍵暗号方式は、公開鍵(Public Key)と秘密鍵(Private Key)と呼ばれる鍵の組み合わせを使用して、情報を暗号化し、特定の相手だけが復号できるようにします。これらの鍵は対になっており、異なる対の鍵を組み合わせることで本人確認が可能となっています。これが電子署名の仕組みです。

電子文書に電子署名を添えて送信

電子署名を添える送信者は、文書を作成した後、ハッシュ関数を使用して署名を暗号化します。この文書を自らの秘密鍵で暗号化し、電子署名を行います。同時に、認証局に対して電子証明書発行の申請を行い、電子証明書(公開鍵)を取得します。

電子署名付き文書の検証

送信者が暗号化した署名と電子証明書を受信者が受け取った後、復号を行います。この検証プロセスでは、公開鍵を使用して署名の暗号化を解除し、電子署名データが正しいかを確認します。同時に、電子証明書を使って公開鍵が本当に送信者のものであることを確認します。また、電子証明書の有効性も確認し、これらのステップで問題がなければ、文書に署名した本人を特定することができます。

電子署名サービスを導入するメリット

最後に、電子署名の導入に伴うメリットについて詳しく考察してみましょう。

デジタルトランスフォーメーション

電子署名の採用は、デジタルトランスフォーメーションの一環として、ペーパーレス化を促進します。伝票や契約書などの物理的な保管は、容量が増加し、管理が複雑になりがちです。このペーパーレス化により、大量の紙を使用する必要がなくなり、それに伴う印刷コストやファイリングの手間も大幅に削減できます。

業務プロセスの効率化

電子署名の導入により、業務プロセスが効率的に進行します。例えば、複数の関係者が関与する承認プロセスでは、紙ベースのやりとりでは進捗の追跡が難しく、時間もかかります。しかし電子署名を利用することで、文書の作成から承認までのスピードが向上し、リアルタイムで進捗を確認できるようになります。

また、紙の利用を排除することで、記入、押印、ファイリングなどの手続きが簡素化され、業務全体の効率が向上します。

セキュリティの向上

電子署名の利用は、情報セキュリティを向上させる手段となります。紙ベースの重要書類は、紛失や盗難のリスクがつきものですが、電子署名を導入することでこれらのリスクを軽減できます。例えば、デバイス上での保管やクラウドサービスを通じたバックアップにより、文書の遺失や漏洩を未然に防ぐことができます。

以上のメリットを考慮すると、電子署名の導入は企業にとって多くの利益をもたらすことが期待されます。

電子署名サービスを導入する際の注意点

電子署名サービスの導入には多くのメリットがありますが、同時にいくつかの注意点も考慮する必要があります。

電子署名が適用できない契約が存在する可能性

特定の契約書においては、まだ電子文書での契約が認められていない場合があります。たとえば、賃貸契約に際して使用される宅地建物売買等の重要事項説明書や定期借地契約などがこれに該当します。電子化を希望する契約書が、電子署名の適用が認められているものかを確認する必要があります。

取引先が電子化に未対応の場合がある

電子化を進めるには、契約を結ぶ相手方が電子署名に対応しているかどうかを確認する必要があります。デジタル化が進んでいない取引先など、即座に電子署名に対応できない企業も存在します。導入前に関係者に対して十分なヒアリングを行い、電子化に関連する問題や懸念がないかを確認しておくべきです。

電子証明書の有効期限に留意する

電子証明書は、3か月から27か月の範囲で証明期間を設定できます。この期間を過ぎると証明書の有効性がなくなります。また、証明期間内であっても商号や本店住所などが変更された場合、証明書の効力が喪失します。期間経過後の失効には手数料の払い戻しがなく、一方で一定の条件を満たせば手数料不要で再発行が可能です。

これらの注意点を踏まえつつ、慎重な導入が必要です。

まとめ

電子契約の採用に際して、書面契約ではなく電子契約を結ぶ場合、電子署名や電子証明書の活用が必要です。電子署名は従来の書面契約における「印鑑」のような存在であり、電子契約書の本人性や改ざん防止を保証する技術です。一方、電子証明書は電子署名と組み合わせて使用し、電子署名が妥当であるかどうかを確認する際に活用されます。電子契約の採用を考えている方は、電子署名と電子証明書の違いを理解しておくことが重要です。