建設業で電子契約を利用できるのか?【電子契約の法的要件と導入メリットを徹底解説】

建設業で電子契約を利用できるのか?【電子契約の法的要件と導入メリットを徹底解説】

新型コロナ禍以降、ハンコ文化の見直しと法改正の動きにより、電子契約の普及が急速に進んでいます。建設業界では印紙税の高額な負担があるため、電子契約の導入はコスト削減の大きな手段となりつつあります。ただし、建設業法や他の法令との調和を考慮する必要があるため、注意が必要です。

建設業法の改正(平成13年4月)により、電子メール等を用いた電子契約が認められました。建築業の契約は複雑で、多くの下請けが関与する場合があり、手続きが煩雑になりがちです。業務の効率化を検討しているなら、電子契約の導入が有益であるかもしれません。

建設業で契約書の電子化を考えている方には、「建設業法において電子契約サービスが利用可能か」という点が疑問視されることもあるでしょう。

この記事では、建設業と電子契約に焦点を当て、法的な要件から導入のメリットまで詳細に解説します。

電子契約システムとは

電子契約システムは、従来の書面による契約プロセスをデジタルで行い、全体をオンラインで完結させるシステムです。通常、契約書の作成、印刷、郵送、返送、保管などの手続きが必要でしたが、これをデジタル化することで手続きを簡素化できます。

一般的に、オンライン上の文書は改ざんやなりすましがしやすいという課題があります。しかし、電子契約システムは、電子署名やタイムスタンプなどを用いて捺印署名を代替することで、この問題に対処できます。そのため、電子契約は書面に代わる有効な契約手段として認識されています。

建設業界でも電子契約システムは使えるのか?

建設業界でも電子契約システムが積極的に利用されるようになっています。以前は書面契約が要求されていましたが、2001年の建設業法改正により、電子契約書の採用が可能となりました。

建設業界では、従来は主に紙媒体で契約が行われていましたが、その業務の迅速さとコスト削減の観点から、電子契約が建設業者の間で徐々に普及しています。国土交通省も電子契約の導入を推進しており、これにより注目が高まっています。

建設業で電子化できる主な書類

現在、建設業においては、以下の書類が電子化が認められています。

  1. 見積書
  2. 発注書・発注請書
  3. 工事請負契約書
  4. 売買契約書
  5. 賃貸借契約書
  6. 保証契約書

ただし、電子契約が全ての契約に適用可能なわけではありません。書面での契約が引き続き求められる分野も存在するため、電子契約を導入する際には、自社の業務に対して適切かどうかを慎重に評価する必要があります。

建設業法における電子契約の扱い

建設業界は、異なる事業者が工事目的ごとに協働することが一般的であり、他の業種に比べて請負契約を締結する頻度が高い傾向があります。契約書や注文書/注文請書の取り決めが多いため、契約プロセスの電子化は特にこの業界において生産性向上のポテンシャルが大きいと言えます。

ただし、前回の記事で述べたように、建設業における工事請負契約の締結は建設業法によって厳格に規定されています。そのため、電子契約の導入には慎重な注意が必要です。

この節では、建設業法における電子契約の取り扱いに焦点を当て、再度確認してみましょう。

建設業の工事請負契約が、2001年に電子契約に適応

昭和24年(1949年)以降、建設業の工事請負契約については、建設業法第19条において書面による署名または記名押印が必要と厳格に規定されてきました。

法律上の「書面」は、紙その他の有形の媒体を指すとされています(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律第2条の3)。

しかしこの規定に対応する形で、急速なビジネスのデジタル化を反映し、平成13年(2001年)の建設業法改正において、新たに第3項が追加されました。

要するに、相手方が同意すれば、電子契約に法的な効力を認め、これを従来の書面による署名や記名押印に準じるものとして扱うことができる、というのがその趣旨です。

建設工事の請負契約の当事者は、前二項の規定による措置に代えて、政令で定めるところにより、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。

建設業法第19条第3項

建設業界の電子契約に関する制約の緩和

電子契約の法的効力が確認されつつも、建設業法第19条第3項における「その他の情報通信の技術」が具体的な範囲や技術基準については不透明なままであり、これに関する議論が関係者間で広がっています。

しかし、2018年以降、経済産業省と国土交通省がクラウド電子契約サービスについて合法と公式に認める声明を発表し、これが建設業における電子契約の普及に対する方向性を明確にしました。

建設業法における電子契約に必要な3つの要件

建設業法の施行規則第13条の4第2項では、建設業の工事請負契約において、電子契約がクリアすべき3つの条件が規定されています。

見読性

電子ファイルは、紙と同じように閲覧/出力できる環境を備えている必要があります。ただし、電子契約を実行する段階でディスプレイが使用されることが一般的であるため、この条件は特に問題になることはありません。

原本性

電子契約の利便性にもかかわらず、オンライン上で情報をやり取りする際にはなりすましや改竄のリスクがつきものです。このため、安全性の確保が重要です。国土交通省の技術的基準に基づくガイドラインでは、電子契約書の改変を防ぐために公開鍵暗号方式による電子署名が必要とされています。

本人性

契約相手が本人であることを確認する措置も求められています。これに関して、認証機関からの電子証明書の取得が必須ではなく、より簡易な立会人型電子契約が十分である旨が国土交通省から認められています。

建設業に電子契約を導入すべき3つの理由

電子契約には、郵送や印刷に伴うコスト削減など多岐にわたる利点が存在しますが、その中でも建設業においてはこれらのメリットが特に著しく現れます。本セクションでは、建設業が電子契約を採用することで享受できるメリットを特に焦点を絞り、3つに結集して整理してみましょう。

印紙税の削減

まず第一に挙げられる大きな利点は、印紙税の軽減です。印紙税は、経済的な利益があると見なされる文書(契約書、注文請書、手形など)にかかる一種の流通税であり、土地や建物など不動産取引や工事請負契約に伴う契約書には収入印紙が貼られ、これに伴う印紙税が課されます。

建設業界では取引金額が膨大であるため、印紙税も相応に高額になります(表)。これが収益を圧迫する要因の一つです。

さらに、納税漏れがある場合、未払いの印紙税額とその2倍の金額(つまり3倍の金額)が遅延税として課せられます(印紙税法第20条)。

電子契約の採用により、これらの課題を解決することが可能です。印紙税法基本通達第7節第44条において、課税文書は紙または同等の媒体に記載・作成されたものと規定されているため、電子契約書は課税文書に該当しないとの解釈が成り立ちます。

業務効率化

従来の書面契約では、契約書を取り交わすためには郵送または関係者が直接対面し、押印が必要でした。郵送には数日の遅延が生じ、また、決裁者が在宅勤務や出張で不在の場合は業務全体が停滞する可能性がありました。現代の迅速なビジネス環境では、これによってビジネスチャンスを逃すことも考えられます。

一方で、電子契約においては、これらの時間的な遅れや機会損失が発生せず、リードタイムを大幅に短縮できます。印刷や発送などの手続きが削減されるだけでなく、リモートワークにも柔軟に対応できるため、建設業界が急速に進む働き方改革にも効果的に寄与します。

管理効率の向上

建設業では工事請負契約書を頻繁に取り交わしますが、紙のファイリングや必要な書類の検索にかかる手間は担当者にとって軽視できない負担となります。特に、担当者がリモートワークや出張中の場合、書類の閲覧が制限されることもあります。

電子契約書をクラウドサーバーにアップロードし管理することで、時間や場所に依存せずに書類の閲覧や確認が可能となります。また、盗難や漏洩などのリスクも最小限に抑えられます。自然災害やランサムウェアの影響があっても、事業活動への悪影響を最小限に抑えることができます。これにより、事業継続計画(BCP)や情報セキュリティ対策、コンプライアンスの向上に大きな効果をもたらします。

建設業に導入する電子契約システムの選び方

見読性を確認する際には、契約書の内容が明瞭に表示されているかをパソコン画面と書面の双方で確認してください。原本性については、公開鍵暗号方式を導入し、かつ電子証明書に対応していることが肝要です。

その他にも、セキュリティ対策の徹底や改ざん対策の実施など、システムがどの程度安全性を確保しているかを確認してください。本人性については、電子署名の本人確認方法として「当事者型」と「立会人型」の2つが存在します。

当事者型」は認証局が本人確認を行う方法であり、「立会人型」はクラウド上で署名を行う方法です。どちらも適切な方法ですので、自社に適したアプローチを選択してください。

建設業における電子契約のメリット

建設業は、下請け・元請け業者との契約から土地や資材の取引、建築確認などさまざまな行政手続きに関わる様々な書類仕事が発生します。

これらの書面仕事を電子契約システムに移行することで、以下の4つのメリットが期待できます。

収入印紙費用の削減

紙の契約書では不動産譲渡契約や建設工事請負契約などで必要な収入印紙が不可欠ですが、電子契約ではこれらの収入印紙は必要ありません。従って、契約を紙から電子契約に切り替えるだけで、収入印紙にかかるコストを削減できる見込みがあります。

建設業だけでなく、金銭消費貸借契約や領収書など、事業全般においても金額によっては収入印紙が必要な場合があり、これらのコストが積み重なることも考えられます。電子契約への移行により、これらの大きなコスト節約が期待できるでしょう。

書類管理の経費削減

電子契約においては、契約書の管理コストを軽減できる期待があります。契約対象となる工事が終了した後も、必要に応じて契約書を証憑として保存する必要があります。特に建設業界では、多数の工事に関連する契約書が発生するため、これらを効率的かつ効果的に保存する必要性が高まります。

また、オフィスの家賃が高額な場合、契約書やその他の文書を保管するスペースにかかるコストも軽減されます。さらに、電子契約システムを利用することで、特定の契約書を効率的に検索し、物理的な紛失リスクを低減できます。これにより、管理業務の負担が軽くなり、スムーズな業務遂行が期待できます。

手続きの効率向上

電子契約を活用すれば、契約書を締結する手続きが迅速に行え、時間や場所の制約がなくなります。紙の契約書を使用する場合は、郵送に2〜3営業日かかり、訪問が必要なためスケジュールの調整が必要です。これに対し、電子契約では契約書が完成すれば直ちに相手との契約が完了し、手続き時間が大幅に短縮されます。

コンプライアンスの強化

紙による契約書の場合、保管された文書は従業員や第三者による不正アクセスや盗み見のリスクが完全に回避できず、最悪の場合、盗難の可能性すら考えられます。不正閲覧を発見することや盗難の発覚後、犯人を特定することも容易ではありません。

一方、電子契約システムでは、契約書ごとに厳格な閲覧権限を設定できるため、不正アクセスを未然に防ぐことができます。加えて、誰が契約書を閲覧したかを追跡できるアクセスログも確認可能です。もし改ざんが試みられた場合でも、電子署名やタイムスタンプにより犯人の追跡が容易になり、被害を最小限に食い止めることができます。

国土交通省による電子契約システムの普及推進

国土交通省は電子契約システムの普及を積極的に推進しています。具体的な取り組みとしては、賃貸契約や土地・建物の売買契約における書面の電子化に向けた社会実験や、公共工事における電子契約システムの活用が挙げられます。

賃貸契約の完全電子契約化に関して、国土交通省は2020年から賃貸取引における書面の電子化の社会実験を開始し、2021年からは売買取引における書面の電子化にも着手しています。これらの実験は、将来的な法改正に向けた検証となっています。

一方で、公共工事の契約においては、国土交通省が2018年から電子契約システム GECS の試行運用を実施しています。この取り組みにより、電子入札システムで落札した事業者が一連の手続きを電子契約で行えるようになり、公共工事における効率的な契約プロセスが実現されました。

これらの取り組みにより、国土交通省は電子契約の普及を促進し、効率的でスムーズな取引環境の構築を目指しています。

電子契約システムの導入により業務効率向上の促進を

建設業では、政府が働き方改革関連法を施行し、働き方の改革が進む中、業務効率化がますます求められています。これに対応する手段として、基幹システムや会計システムの導入が考えられますが、これらは導入までのハードルが高く、時間もかかるという懸念があります。そこで、迅速な効果を求める方におすすめなのが、クラウド型の電子契約サービスの導入です。電子契約サービスは、一部署または一契約類型から試験的に導入可能であり、他の業務効率化サービスよりも比較的迅速にご利用いただけます。

イーデイエックスがお勧めするグレートサイン(Great Sign)は、オンラインで簡単に契約を締結できるクラウド型電子契約サービスです。 これまで紙と印鑑で行っていた煩雑な契約および管理に付随する業務をオンライン上の管理画面を介して行うことができ、契約に伴うコスト、対応時間、契約書の保管スペースの削減や導入事業者の業務の効率化が可能です。また、建設業での電子契約システムの導入実績も豊富です。

グレートサインの特長として、高いセキュリティ、簡単な導入プロセス、柔軟なカスタマイズが挙げられます。

電子契約の弱点として、電子署名やタイムスタンプの有効期限が挙げられます。通常、10年ほどに設定されていることが多いため、失効後は署名の検証ができません。

しかしGreat Signでは、LTV(長期検証)が導入済みです。つまりすべての契約プランでタイムスタンプが自動的に更新されるため、10年を超える契約でも検証が可能な仕様になっています。これにより、建設業における業務プロセスの迅速な効率化が可能となります。業務効率化のための電子契約導入をお勧めします。