デジタル署名とは?【電子署名との違いと仕組み、法的効力から利用するメリットまでわかりやすく解説】

デジタル署名は電子署名の一種で、主に改ざんのリスクのある電子文書において信頼性を確保するために使用されます。デジタル署名は、電子署名と似たような概念として捉えられがちですが、厳密な定義は異なります。デジタル署名は、電子文書の送受信において本人証明の役割を果たします。これにより、文書が本人によって署名されたことが確認でき、その信頼性が向上します。

近年、業務において紙の文書ではなくオンラインで生成されるデータがますます一般的になっています。このペーパーレス化の流れに伴い、デジタル署名が注目を集めています。

本記事では、デジタル署名と電子署名の違いに焦点を当て、デジタル署名の法的効力から利用するメリットまでをわかりやすく解説します。

デジタル署名とは?

デジタル署名とは、公開鍵暗号方式やハッシュ関数などの高度なセキュリティ技術を用いて暗号化された電子的な署名です。この技術により、改ざんやなりすましを困難にし、電子文書の本人証明や非改ざん性の確認が可能となります。

混同されやすいが、「デジタル署名」は電子署名の一部であり、公開鍵暗号方式(PKI)を含む高度な暗号技術を指します。デジタル署名は電子文書の認証と改ざんの検知が可能であり、契約時に使用すると安全性が向上します。

通常、オンラインで作成したデータでも、文書の有効性を証明するためには印鑑や作成者の署名が必要です。しかし、これには手間や時間がかかり、ペーパーレス化の進展に逆行することがあります。

デジタル署名の導入により、電子文書のオンライン送受信が容易になり、業務プロセスを合理的に進めることができます。デジタル署名は電子署名の一種であり、公開鍵暗号方式を使用することで高いセキュリティを提供します。

デジタル署名と電子署名の違い

デジタル署名と同様の概念として、電子署名が存在します。電子署名は、信頼性のある電子文書であることを立証するための技術や仕組みを指します。

2001年に制定された電子署名法は、電子文書においても紙の文書と同じく真正性を確保するための基盤を提供しています。この法律に基づき、一定の要件を満たした電子署名が付与されれば、その電子文書は手書き文書と同等の法的信頼性を有することが保障されます。

デジタル署名は、法律上の広義の電子署名であり、高度な技術を駆使して本人確認とデータの改ざん防止を強化したメカニズムの一例です。

ただし、電子署名法では具体的な実現技術について厳密な定義を与えていません。これは、デジタル技術の進展に迅速に適応する必要があるためです。

デジタル署名の仕組み

デジタル署名は、主に公開鍵暗号方式とハッシュ関数の組み合わせによる仕組みを採用しています。電子文書を暗号化するとデータサイズが大きくなるため、ハッシュ関数が活用され、同一データから同じハッシュ値が算出されます。このハッシュ値の照合により、データの信頼性を確認します。

公開鍵暗号方式では、秘密鍵と公開鍵という異なる2つの鍵が使用され、秘密鍵はデータの暗号化に、公開鍵は暗号化されたデータの復号に利用されます。これらの鍵は一対となり、秘密鍵は所有者が厳重に管理します。この方式により、データの機密性が確保されます。

デジタル署名の手順では、ハッシュ値の算出後、圧縮されたデータは公開鍵暗号方式を用いて暗号化されます。このデータの暗号化がデジタル署名の具体的な行為を指します。

デジタル署名の公開鍵暗号方式の流れ

送信者(署名側)の手順

秘密鍵と公開鍵の入手

送信者は秘密鍵と公開鍵を取得します。

公開鍵の送付

送信者は公開鍵を受信者に送付します。

ハッシュ値の算出

電子データからハッシュ関数を用いてハッシュ値を算出します。

ハッシュ値の暗号化

秘密鍵を使用してハッシュ値を暗号化します。

データと暗号化されたハッシュ値の送信

暗号化されたハッシュ値と電子データを受信者に送信します。

受信者(署名検証側)の手順

公開鍵を用いたハッシュ値の復号

受信者は公開鍵を使用して暗号化されたハッシュ値を元に戻します。

ハッシュ値の再算出

受信者も同じハッシュ関数を使用して電子データからハッシュ値を算出します。

ハッシュ値の比較

    復号したハッシュ値と再算出したハッシュ値を比較し、一致しているかを確認します。

    この仕組みにより、公開鍵暗号方式を使用したデジタル署名によって、送信者の認証とデータの改ざん検知が可能となります。

    (※1)秘密鍵と公開鍵とは

    秘密鍵と公開鍵は電子文書の暗号化および複合化に利用される仕組みで、互いに対応しています。秘密鍵で暗号化されたデータは、それに対応する公開鍵を用いてのみ解読可能です。この仕組みにより、公開鍵がない者は暗号を解読できないため、機密性が確保されます。

    (※2)ハッシュ値とは

    ハッシュ値は元のデータからハッシュ関数を経て算出される値を指します。電子文書の暗号化においては、通常、巨大な値になります。このハッシュ値を再度暗号化することが一般的であり、データの機密性を保つのに役立ちます。

    デジタル署名のアルゴリズムと信頼性確保

    デジタル署名は公開鍵暗号方式とハッシュ関数を組み合わせて使用されます。日本では、高いセキュリティ性を有する「Sha-256WithRSAEncryption」アルゴリズムが広く採用されています。他にも「Sha-1WithRSAEncryption」や「id-dsa-with-sha1」などのアルゴリズムも存在します。

    署名者から受け取る公開鍵の信頼性は、「電子証明書」によって確認されます。電子証明書は認証局(CA)と呼ばれる機関によって発行され、申請者の身元と秘密鍵・公開鍵が確認された上で発行されます。公開鍵に電子証明書を結びつけることで、その公開鍵の信頼性が保証されます。

    デジタル署名の信頼性と法的効力

    デジタル署名の法的効力は、国や地域において電子署名法などの法的枠組みに基づいて定められています。一般的に以下のポイントが考慮されます。

    多くの国で、電子署名法が制定され、デジタル署名に紙の文書における署名と同等の法的効力を認めています。これにより、デジタル署名は法的な手続きや契約において有効に活用されています。

    デジタル署名は高い信頼性を提供し、本人確認やデータ改ざんの防止などにおいてセキュリティが確保されています。これが法的に認められ、デジタル署名が法的な効力を有する要因となっています。

    電子証明書などを発行する認定機関や公的機関との連携も重要であり、これにより信頼性のあるデジタル署名が実現されます。公的機関との連携により、法的効力が法的な文書や契約に認められることとなります。

    一方で、デジタル署名が法的に有効であるためには、関係者間での合意が必要とされます。署名者や契約当事者がデジタル署名を法的な同意として認識し、これに合意することが法的効力を確立する要件となります。

    最終的に、デジタル署名が法的に有効である場合、法廷や法的な争議の際には証拠として認められ、デジタル技術の進展に柔軟に対応する法的な信頼性が確保されます。

    デジタル署名の利用シーン

    デジタル署名は多岐にわたるシーンで活用され、その効果が実感されています。以下は、デジタル署名の主な利用シーンについてのご紹介です。

    電子行政手続き

    デジタル署名を導入した電子行政手続きでは、申請や届出、申告などがオンライン上で行えます。これにより、住民の事務負担が軽減され、手続きの利便性が向上します。

    電子入札

    国や自治体が実施する入札プロセスでは、デジタル署名が契約や認証などの段階で使用されています。これにより、プロセスの迅速化や透明性の向上が図られています。

    電子署名付きメール

    メールの送信者認証やデータの改ざん防止のために、電子署名が電子メールに付与されています。特に、金融機関などの重要な情報を含むメッセージでは、デジタル署名がフィッシング詐欺などからの保護に寄与しています。

    電子保存

    国税関連や医療文書などの電子データ保存においても、デジタル署名が活用されています。ただし、一部のドキュメントでは電子署名とタイムスタンプの両方が必要とされているため、慎重な取り扱いが求められます。

    これらの利用シーンにおいて、デジタル署名は効率的で安全性の高いソリューションとして広く採用されています。

    デジタル署名を利用するメリット

    デジタル署名は高度な技術を駆使し、電子文書におけるセキュリティを向上させる電子署名の一形態です。主なメリットは以下の通りです。

    信頼性の容易な確認

    デジタル署名では、公開鍵暗号方式やハッシュ関数を利用して電子文書の信頼性を技術的に確認できます。公開鍵とハッシュ値を用いてデジタル署名が行われた時点から、改ざんが行われていないかを第三者が客観的に検証することが可能です。これに対して、手書き文書では筆跡鑑定が必要であり、アナログな検証は正確性が不足し手間と時間がかかります。

    法的な効力の付与

    電子署名法の制定により、一定の条件を満たすデジタル署名は法的に有効とされています。これは、本人確認と非改ざん性の要件を満たすことが求められます。デジタル署名は公開鍵暗号方式を用い、手書き文書における署名や押印と同等の法的効力を与えることができます。ただし、法律の要件を満たさないデータは法的効力を有さないため、注意が必要です。

    デジタル署名のデメリットとその注意点

    デジタル署名は真正性を確認し、法的効力を有するデータを作成する優れた手段ですが、一方でいくつかのデメリットが存在します。以下に、デジタル署名のデメリットとその注意点を紹介します。

    法的な有効期限の制約

    デジタル署名には発行される電子証明書の有効期限が最長5年という制約があります。これは、新たな技術の進展によるセキュリティの強化や暗号解読のリスクを最小限に抑えるための措置です。ただし、デジタル署名を使用する際には、電子証明書の有効期限に注意し、必要に応じて更新を行うことが重要です。また、長期保存が求められる場合は、タイムスタンプなどの手段で長期利用が可能な「電子署名の長期利用(長期署名)」を検討しましょう。

    本人の意思の証明が課題

    デジタル署名を含む電子署名は法的に本人の意思に基づいていると推定されますが、具体的なデジタル署名業務を行った当人の確認は難しい場合があります。この際、デジタル署名を導入する際には、セキュリティを強化するために二段階認証やマルチファクタ認証を導入し、本人性をより確実に担保することが求められます。ただし、適切な手段を選定する際には、プライバシーや利便性にも留意する必要があります。

    デジタル署名と電子署名の違いを理解し、要件に応じて使い分けが重要

    デジタル署名と電子署名は、電子データの認証に関する概念でありながら、それぞれ異なる特性を持っています。電子署名は一般的な電子データの認証を指し、データの作成者が本人であることを確認する仕組みの総称です。一方で、デジタル署名は電子署名の一種で、公開鍵暗号方式などの高度な暗号技術を用いて本人確認や非改ざん性の証明を厳格に行います。

    特に契約書や申請書などの高い信頼性が求められる文書においては、デジタル署名が適しています。デジタル署名は公開鍵暗号方式を採用することで、一段と堅牢なセキュリティを提供し、文書の信頼性を高めます。

    ビジネスシーンでは、電子署名とデジタル署名の違いを理解し、文書の重要性や信頼性の要件に応じて使い分けることが重要です。また、効率的で柔軟な取り組みが求められる場合は、電子契約サービスの導入が検討されます。これにより、安全かつ効率的に電子文書の管理や取引を行うことが可能となります。