電子署名付きのメールとは?【仕組みから付与方法までわかりやすく解説】

近年、ペーパーレス化やテレワークの促進に伴い、文書の電子化と管理がますます一般的となっています。特に、セキュリティリスクを最小限に抑えつつ効果的な電子文書管理を実現するため、電子署名の活用が注目されています。その中でも、電子署名を備えたメール、通称「電子署名付きメール」は、なりすましやメール改ざんからの保護に効果的です。

ここでは、電子署名付きメールの基本的な仕組みや付与手法から、S/MIME対応のメールソフトの導入・設定方法まで、わかりやすく解説します。

電子署名とは

電子署名は、電子文書が特定の個人によって生成され、また改ざんされていないことを確認するために使用される電子的な署名を指します。通常、紙の文書では印鑑や手書きの署名が利用され、これらは文書の正当性を裏付けます。

ただし、電子文書においては、紙の文書と同様の法的効力が得られるかどうかが課題となります。例えば、PDFファイルに押印があったとしても、電子的な環境では容易に書き換えが可能であり、文書の正当性を確認することが難しくなります。

従って、電子契約書においても紙の契約書と同等の法的な信頼性を確保するためには、電子署名が重要です。電子署名は、文書が特定の個人によって作成され、かつ改ざんがないことを確認する機能を果たし、これによって契約書の正当性が保たれます。

電子署名付きメールとは

電子署名付きメールはますます不可欠なセキュリティ手段として浸透しています。この技術は、送信者が正当なものであり、メールの内容が改ざんされていないことを確認するための信頼性の高い手法となっています。

最近では、悪意を持った者が顧客のメールアドレス情報を盗み取り、信頼できる企業や通販事業者になりすましてフィッシング詐欺や個人情報の盗難が増加しています。こうした脅威から身を守るために、電子署名がメールに適用されているかどうかを確認することが重要です。

電子署名があれば、メールの送信者が本人であることやメールの内容が改ざんされていないことを確認できます。これにより、安心してメールでのやり取りが可能になります。電子署名付きメールを利用することで、証拠の信頼性を向上させるだけでなく、フィッシング詐欺やデータ改ざんから保護するセキュリティ対策としても有効です。

同時に、電子署名は契約業務の効率化にも寄与します。電子署名を導入すれば、メール上で簡単に書類への捺印やサインが可能となり、印刷や郵送といった手続きが不要になります。これにより、業務プロセスが迅速で効率的に進行し、コストの削減にも寄与します。電子署名はセキュリティだけでなく、業務の生産性向上にも大きく寄与する先進的なアプローチと言えるでしょう。

電子署名付きメールの仕組み

電子署名付きメールには、S/MIMEという暗号化方式が使用されています。ここではS/MIMEについて解説します。

S/MIMEとは

電子署名付きメールでは、「S/MIME(Secure/Multipurpose Internet Mail Extensions)」と呼ばれる暗号化方式が広く採用されています。S/MIMEはメールのセキュリティを向上させるために設計された規格であり、電子証明書を使用してメールの暗号化と電子署名を行うことができます。

この仕組みでは、送信者は秘密鍵を使用してメールの内容を暗号化し、電子証明書とともにメールを送信します。受信者は公開鍵を使用してメールの内容を復号します。メールが正常に復号できる場合、それは正規の送信者が所有する秘密鍵によって暗号化されたことを示し、送信者の本人確認ができます。また、復号された内容を確認することで、メールが改ざんされていないかも確認できます。

ただし、公開鍵を保有する受信者においても、その公開鍵が信頼性を持っているかどうか疑問視されることがあります。この点に対処するために、信頼できる認証局と呼ばれる第三者機関によって発行された電子証明書を使用することが推奨されています。

簡単にまとめれば、S/MIMEを使用した電子署名付きメールの流れは以下の通りです:

  1. 送信者は秘密鍵を使用してメールに電子署名を施す。
  2. 送信者は電子証明書をメールに添付して受信者に送信する。
  3. 受信者は公開鍵を使用してメールを復号し、電子署名の正当性を確認する。
  4. 受信者は認証局によって発行された電子証明書の効力を確認する。

この仕組みによって、電子署名付きメールはセキュアで、双方の通信が信頼性を持って行われることが保証されます。

メール暗号化の流れ

S/MIMEでは、公開鍵暗号方式を採用しています。この手法では、メールの暗号化に公開鍵と秘密鍵の組み合わせが使われます。公開鍵は暗号化に使用され、秘密鍵はその暗号を解読するために利用されます。これらの鍵は主に受信者が生成し、送信者には公開鍵が暗号鍵として共有されます。

送信者は共有された公開鍵を用いてメールを暗号化し、その結果を受信者が所有する秘密鍵でのみ復号できるようにします。重要なのは、暗号化されたメールデータが漏洩しても、第三者がそれを解読することが不可能であるという点です。なぜなら、暗号化データを解読するためには、秘密鍵が必要であり、その秘密鍵は受信者だけが保持しているからです。

電子署名付きメールを作成する方法

電子署名付きメールの作成手順は以下の通りです。

  1. メールデータの圧縮(暗号化)
    メールデータは特別な関数を用いて圧縮され、それによって暗号化が施されます。
  2. 電子署名の付与
    送信者は自身の秘密鍵を使用して電子署名をメールに付与します。
  3. メールの送信
    電子署名が付与されたメールが送信者から送信されます。
  4. メールの受信と復号
    受信者は公開鍵を使用してメール内の暗号化された値を復号します。これにより、送信者が正規であることが確認されます。
  5. ハッシュ値の比較
    受信者は暗号化されたメールと復号したメールのハッシュ値を比較し、改ざんがないことを確認します。

送信者がなりすましでないことは、秘密鍵と対応する公開鍵でメールが復号できることによって確認されます。同時に、ハッシュ値の比較により、メールが改ざんされていないことも確認されます。これにより、電子署名付きメールのセキュリティが確立されます。

電子署名付きメールの導入手順

電子署名付きメールを利用するためには、まずS/MIMEに対応したメールソフトを取り入れ、その後電子署名の設定を行う必要があります。

以下は、電子署名付きメールの導入手順の概要です。

S/MIME対応メールソフトの導入

電子署名を利用するには、S/MIMEに対応したメールソフトを導入する必要があります。主要なメールソフトウェア(GmailやOutlookなど)はS/MIMEに対応しています。もし現在のメールソフトが非対応であれば、S/MIMEに対応したソフトへの切り替えが必要です。

メールソフトで電子署名の設定

S/MIME対応のメールソフト(例: Outlook)で電子署名を追加する手順は次の通りです。

オプションタブから署名の追加

Outlookでメッセージを作成し、「オプション」タブを開きます。

「アクセス権からメッセージに署名を追加」をクリックします。

チェックボックスが表示されない場合の手順

作成したメールを開き、「オプション」をクリックします。

ダイアログボックス起動ツールボタンを右下にある「その他のオプション」でクリックします。

「セキュリティ設定」を選択し、「このメッセージにデジタル署名を追加する」のチェックボックスをオンにします。

「OK」 < 「閉じる」をクリックして手順を完了します。

デジタルIDがインストールされていない場合の手順

「ファイル」メニューから、「オプション」 < 「セキュリティ センター」をクリックします。

「Microsoft Outlook セキュリティセンター」から、「セキュリティセンターの設定」 < 「電子メールのセキュリティ」をクリックします。

「インポート/エクスポート」をクリックし、コンピューターのファイルからデジタル ID をインポートします。

デジタルIDは様々な業者から提供されています。「インポート/エクスポート」 < 「デジタルIDの取得」をクリックすると、デジタルIDサービスの一覧が表示されます。

Outlook以外のメーラーを使用する場合は、各メーラーの設定手順を確認し、指示に従って設定を完了してください。

電子メールのリスク

電子署名を活用しない電子メールにはいくつかのリスクが存在します。

情報漏洩のリスク

電子署名を利用しない電子メールは、インターネット上を経由して多くのサーバーを通過するため、部外者がメールの内容を閲覧する可能性があります。特にサーバーに精通した者であれば、簡単にメールの中身を見ることができます。このため、電子メールを利用する際には、情報漏洩のリスクを考慮する必要があります。

フィッシング詐欺のリスク

電子署名を利用していない電子メールでは、送信者を偽ることが容易であり、本人確認が難しいです。これにより、見かけ上は本物のメールに誘導され、フィッシング詐欺に巻き込まれ、個人情報が抜き取られる可能性があります。電子署名を活用しない場合、メールの信頼性に対する不確実性が高まります。

これらのリスクを理解し、セキュリティを意識した電子メールの利用が重要です。

電子署名付きメールのメリット

電子署名付きメールを使用することで、送信者が正規であり、メールの内容が改ざんされていないことが証明されます。これにより、メールのやり取りにおいてなりすましや改ざんなどのサイバー攻撃からの被害を防ぐことが可能です。

銀行が顧客に対して電子署名を付与したメールを送信する場合を考えてみましょう。この電子署名により、顧客はメールが正規の銀行によって作成されたものであり、その内容が改ざんされていないことを確認できます。結果として、フィッシング詐欺やその他のメールを悪用した詐欺からの被害を最小限に抑え、企業の信頼性向上に貢献します。

このように、重要な情報をメールでやり取りする際には、電子署名を付与して送信することがおすすめされます。これによってセキュリティが向上し、信頼性が確保されるため、サイバー攻撃からの守りも強化されます。

電子署名付きのメールなら電子契約システムもおすすめ

電子署名をメールに手動で付与するためには、S/MIME対応のメールソフトを導入し、設定が必要です。しかしながら、この手法は一つひとつのメールに対して手動での操作が必要であり、手間がかかることがあります。特に契約書などのやり取りにおいて、これでは効率が損なわれる可能性があります。

そのため、メールにおける契約書のやり取りにおいてセキュリティを向上させる手段として、「電子契約システム」を検討することがおすすめです。電子契約システムは、Web上で契約締結を行える仕組みであり、PDFやメールなどの電子データに対して電子署名を自動で付与する機能が組み込まれています。この自動化されたプロセスにより、手動での署名付与にかかる手間やソフトの設定にかかる労力を軽減することが可能です。

電子契約システムは、契約書のテンプレート機能や承認ワークフローの自動化など、契約業務全体を効率化する機能も提供しています。これにより、セキュリティの向上だけでなく、契約プロセス全体の効率性も向上させることができます。