ワークフローとは?【問題点、改善点やシステムの比較方法まで解説】

ワークフローとは、Work(仕事)とFlow(流れ)を組み合わせた言葉で、「仕事(業務)の流れ、もしくは流れを図式化したもの」を意味します。つまり、職場における業務の一連の流れのことです。ワークフローが停滞すると業務の効率が大きく下がってしまうことになるので、意識的な改善が必要となります。

業種や職種を問わず、組織内で行われる多くの業務では、「誰が何をどのように申請・起案し、承認や確認を行い、最終的に決裁・意思決定する」という一連の流れが存在します。

本記事では、ワークフローの意味やワークフローの問題点、改善点について詳しく解説します。

ワークフローとは

ワークフローとは「業務の流れ」を意味し、ある業務や活動における「一連の作業や手続き」を指します。日々行っている仕事にはある程度決まった流れが確立されていることが一般的です。例えば社内備品を発注するときには、備品を必要とする人が上司に申請をし、上司が担当者に引き継いで発注を行うといったフローがあります。もちろん、社内の複数人が関わる複雑なフローを経る業務も多々あります。

ワークフローが機能していない場合、企業の業務サイクルが崩れたりスピード感が損なわれたりといった問題が生じます。不要な業務が多く発生し、生産性が大きく低下してしまうおそれもあります。最悪の場合、経営判断を誤ってしまい、トラブルに発展することがあるかもしれません。

業務効率や生産性を高めるためには、ワークフローのパターンを洗い出して可視化することが重要です。

業務改善の鍵であるワークフローの可視化

ある業務を改善するには、その業務の流れをパターン別に洗い出し、ワークフローを可視化することが重要です。それにより、発生する作業や手続き、関係する部署や役割分担、そしてやり取りする情報(文書・データなど)が明確になります。

そして、可視化されたワークフローは、無駄なプロセスや問題点を客観的に評価することができ、改善に向けた取り組みが可能になるからです。

ワークフローシステムとは

ワークフローの本来の意味は「仕事(業務)の流れ」ですが、そこから発展して「ワークフローシステム」を指す場合がありますワークフローシステムとは、業務の流れを自動化するためのシステムのこと。

ワークフローシステムを導入することで、社内で行われている各種申請や稟議などの業務手続きを電子化(デジタル化)することができます。

ワークフローシステムを適用できる業務範囲

ワークフローシステムを適用できる業務は、大きく分けて以下3つに区分されます。

  1. 申請業務
  2. 承認・決済業務
  3. 書類の保管

1は申請書の作成や領収書の添付などに関わる業務です。
ワークフローシステムでは、申請フォームの作成、各種申請書のテンプレート使用、システム上での申請などを行うことができます。

2は課長や部長などの管理職が申請を承認する業務です。
従来は管理職の捺印をもって承認するのが一般的でしたが、ワークフローシステムでは、システム上で申請書を確認、承認、決済することができます。

3は申請書や稟議書などの各種書類を管理する業務です。
ワークフローシステムでは電子データとしてこれらの書類を管理することが可能です。

ワークフロー改善のメリット

ワークフローに無駄なプロセスがあるときには、必要に応じて業務改善の対応を行いたいものです。ワークフローを改善すれば、企業には以下のように多くのメリットがもたらされます。

すべての従業員がワークフローに沿って業務を行える

ワークフローが確立されていれば、すべての従業員がフローに沿った業務を行うことが可能となります。ルール化された一連のワークフローはいわばマニュアルのような役割を果たします。結果として、業務が効率的に進みやすくなり、問題も起きにくくなるというメリットが得られます。

業務の全体像をつかみやすくなる

無駄なプロセスがある状態が続くと、業務がどのように遂行されるかのフローがわかりにくくなるおそれがあります。結果的にミスやトラブルが起こりやすくなるため、適宜ワークフローを改善して効率化を図る必要性が生じます。

適切なワークフローが機能していれば、関連する業務の全体像が見えやすくなります。一連の作業が可視化できれば問題が起きにくくなり、作業効率もアップしやすくなるものです。

無駄な業務を省くことができる

ワークフローに無駄なプロセスがあるときには、無駄を省く改善策が必要となります。例えば承認に手間がかかっているときには承認の人数を減らしたり、書類の受け入れ方法を見直したりといった方法で対処できます。また、書類整理の方法を見直して無駄を省く方法も考えられます。

ワークフローをシステム化すれば無駄はさらに削減できます。書類を他部署に回したりファイリングしたりといった手間がなくなるのはシステム化の大きなメリットです。

ワークフローにおける無駄な手順を省くことができれば、業務のプロセスが減り効率がアップしやすくなります。

内部統制が強化されやすくなる

ワークフローを徹底することによってすべての従業員が一定のルール内で業務を遂行することが可能となります。ワークフローが適切に機能していることは、企業が統制されることにもつながります。

例えば紙媒体のワークフローでは、必要な承認を得た上で決裁を進めればトラブルを防止できます。専用のワークフローシステムを使った運用であれば、さらにアクセス管理などの対処を行い、情報漏えい防止やデータの一元管理といった対処も可能となります。

管理者には、ワークフローが適切に運用されているか、すべての段階において問題が起きていないかをこまめにチェックしコントロールすることが求められます。ワークフローの逸脱によるトラブルを防ぐためにも、プロセスを適切に管理しましょう。

ワークフロー運用の注意点

ワークフローをより効率的に運用するためには、以下3点を押さえておくことが重要です。

  • 目的に沿ったルールの策定
  • ルールの可視化・社内への共有の徹底
  • 紙によるワークフローの問題点

一つずつ解説していきます。

目的に沿ったルールの策定

ワークフローを効率よく運用するためには、初めに目的に沿ったルールを策定する必要があります。
一般的な承認フローは、申請書を作成し、上司に承認・決済の捺印をもらって、管理部門に提出するのが一連の流れとなります。

ただし、申請の内容によっては独自のルールが適用されることもあります。
例えば、一定の価格を下回る物品の購入時は上司の申請をとおさず、直接管理部門に提出することが可能などです。

こうした独自のルールをワークフローにしっかり落とし込まないと、現場に混乱を招く原因となります。ルールを策定する際は、何を目的にワークフローを運用するのか、承認者を誰にするのかを決めた上で、条件ごとに承認ルートを設けることが大切です。

ルールの可視化・社内への共有の徹底

ワークフローのルールを策定したら、社内に周知させる必要があります。そのためには、ワークフローのルールが誰にでもわかるように言語化、可視化しなければなりません。

具体的には、マニュアルを作成していつでも閲覧できる状態にしておく、従業員向けに説明会を開いて担当者が口頭で説明するなどです。社内への周知を徹底しないと、ワークフローを運用するうえで問題やトラブルが発生しやすくなり、事後処理に追われる可能性が高くなります。

ただ、ワークフローが長期化かつ複雑化している場合、マニュアルを設置したり、説明会を開催したりしても、周知までに時間がかかる場合があります。必要に応じて窓口や担当者を設け、従業員の対応にあたるなどの工夫を取り入れるとよいでしょう。

紙によるワークフローの問題点

ワークフローを紙の書類で運用する企業は少なくありません。申請の書類を各種用意して運用すれば一見便利に思えます。しかし、紙の書類には必要な書類を探し出す手間や決済する手間がかかるものです。

紙ベースの書類は、ワークフローのどこかのポイントで停滞してしまうことがあります。提出された紙の申請書を次にどの担当者に回すのか悩まされたり、担当者がつい書類を溜めてしまったりすると、ワークフローは滞ってしまうことになります。1つ1つの停滞は小さなものですが、いくつものワークフローが停滞すると業務が圧迫され、大幅な効率ダウンにつながってしまいます。

紙の書類には進捗状況がわからないというデメリットも考えられます。特に、書類がどこかで停滞しているときに進捗状況が把握できないのは大きな問題です。社外や関連会社との間で書類をやり取りするときには郵送のやり取りが必要となります。紙の書類の郵送には数日間の時間を要するため、どうしても効率が下がってしまいます。

また、紙ベースの書類は保管や管理にも手間がかかります。管理する人員の確保、管理場所の確保にはコストもかかってしまいます。紙ベースの書類は整理が難しいため、膨大な紙ベースの中から必要なものがピックアップできず困らされるトラブルも起きるかもしれません。こういった問題点を解決するために、思い切って紙の申請書を廃止する動きも出てきています。

ワークフローの改善方法

ワークフローの整え方にはいくつかの方法が存在します。
ここからは、一般的なワークフローの整え方について解説します。

ワークフローツールを自作する

ワークフローシステムは、ExcelやGoogleフォーム、オープンソースなどを利用すれば自作することも可能です。システムを自作する場合、既存のシステムを導入するよりコストを抑えられる、自社のワークフローに適したシステムを構築できる、情報管理しやすいといった利点があります。

一方で、トラブルが発生しても社内で対応しなければならない、システムの拡充や更新、メンテナンスが難しいといったデメリットもあります。

また、自作する方法によってはプログラミングの知識や技術が必要不可欠です。社内にもともと専門の知識・技術を有する社員がいれば問題ありませんが、そうでない場合は新たに人材を採用するか、育成・開発する必要があります。

ワークフローソフトを導入する

ワークフローシステムには、さまざまな機能があり、細かい機能はシステムによって異なりますが、おおむね以下のような主な機能が備わっているのが主流です。

  • 申請書類のフォーマット化
  • 申請・承認・決裁ルートの設置および自動化
  • 進捗状況の見える化
  • データの一元管理

これらの機能を搭載したワークフローシステムを導入すると、これまで手動で行ってきた作業工数のいくつかをカットできるため、申請・承認・決済が迅速化されます。

また、ワークフローが可視化されるため、申請・承認がどこまで進んでいるか、承認漏れやミスはないかなどを正確に把握できるようになります。

さらに、ワークフローシステムにはセキュリティやアクセス制限などの機能が備わっているため、従業員の不正を未然に防ぎやすいところも利点の一つです。

ワークフローシステムを比較・選ぶ方法

ワークフローシステムの導入を検討する際には、以下の観点を確認して比較検討するとよいでしょう。

  • サービス形態(オンプレミス・クラウド)が自社に適しているか
  • 柔軟に承認ルートの設定ができるか
  • 操作性・サポートが充分か
  • システム連携がしやすいか

ここからは、ワークフローシステムを比較する際に重要なポイントについて解説します。

サービス形態が自社に適しているか

ワークフローシステムは、社内にサーバーやシステムを構築するオンプレミス型と、外部サーバーでデータを管理するクラウド型の2タイプに区分されます。

オンプレミス型は一からシステムを構築する分、自社のワークフローに適したシステムにカスタマイズしやすいところが利点です。

ただ、社内サーバーの設置やシステムの構築にはかなりの費用がかかるため、後述するクラウド型に比べるとコストは割高になります。

一方のクラウド型は、外部サーバー上でシステムを運用するタイプです。インターネット環境があれば、いつでもどこでもサーバーにアクセスできるため、出先や出張先からもシステムを利用できるところがメリットです。

また、メンテナンスはベンダーが行ってくれるため、自社で対応する必要がなく、初期導入費が比較的安くて済むところも利点の一つです。ただ、オンプレミス型に比べるとカスタマイズ性はやや劣ります。

どちらのタイプが適しているかは企業の目的や予算によって異なりますので、自社に合っているタイプをしっかり見極めましょう。

柔軟に承認ルートの設定ができるか

承認ルートのルールは企業によって異なるのはもちろん、部署や部門によって差が出ることもあります。特に大企業は部門、部署が多岐にわたるため、承認ルートが長期化、複雑化しやすい傾向にあります。

部門や部署に応じて承認ルートをアレンジできるよう、柔軟な設定に対応したシステムを利用するのがおすすめです。例えば、◯万円以上の申請ならAルート、それ以下ならBルートなど、自動的にルートを選択できる機能がついたものや、条件によってルート分岐されるシステムを選ぶと、複雑なワークフローにもしっかり対応できます。

システムによっては、複数の承認者による合議や多数決承認などの設定ができるものもありますので、必要に応じて検討しましょう。

操作性・サポートが充分か

ワークフローシステムは、上手に活用できれば紙ベースの業務フローよりも手間と時間を省くことができる便利なシステムです。

しかし、初めてシステムを導入した場合、使い勝手がよくわからず、かえって現場を混乱させてしまうこともあります。場合によっては、従業員からの問い合わせやトラブルが頻発し、本来の業務に支障をきたすことになりかねません。現場へスムーズに浸透させたいなら、なるべく簡単に操作できるシステムを選んだ方がよいでしょう。

もちろん、シンプルな操作感のシステムを導入しても、トラブルや不具合が起こったり、運用方法に迷ったりする可能性はあります。

サポート体制が整っているワークフローシステムを利用すれば、困ったときやトラブルが発生したときにも迅速かつ適切に対応してくれるので、システムを初めて導入する企業ほど、サポート体制は念入りにチェックしましょう。

システム連携がしやすいか

経費管理システムや文書管理システムなど、他のシステムを既に利用している場合は、ワークフローシステムと連携しやすいかどうかも重要なポイントになります。外部システムと連携できない、あるいは連携に手間と時間がかかるものを選ぶと、ワークフローシステムのスムーズな導入を妨げる要因となります。

どの外部システムと連携できるか、どのように連携するかはワークフローシステムによって異なりますので、既存のシステムを確認したうえで、手軽に連携できるシステムを選ぶとよいでしょう。

なお、ワークフローシステムのなかには、さまざまな機能が一元化されたグループウェアもあります。ワークフローシステムの導入を機に、他のシステムの利用も検討している場合は、グループウェアを選択するのも一つの方法です。

ワークフローを最適化し業務効率向上

まとめとして、業務プロセスを効率的に管理するための重要な要素の一つが、ワークフローの最適化です。ワークフローとは、業務の一連の流れや手順を指し、これを適切に設計し、可視化することで業務効率を向上させることが可能です。

ワークフローの確立により、業務プロセスは透明化され、無駄なステップや遅延を特定し、改善の余地を見つけることができます。また、内部統制の向上や品質管理の強化にも貢献します。

さらに、ワークフローシステムの導入は、効率化を一層高める手段として注目されています。組織に合ったワークフローシステムを選定し、従業員に適切なトレーニングを提供することで、業務プロセスを自動化し、誤りを削減します。

ワークフローの最適化は、業務プロセスを効率的かつ効果的に運用するための不可欠なステップです。組織は、ワークフローの設計とワークフローシステムの活用に焦点を当て、業務効率向上を図ることで、競争力を維持し、成長を実現するでしょう。ワークフローの最適化は、現代のビジネス環境やDX化において不可欠な要素と言えます。